感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』1巻及び2巻

 大体の内容「公立処刑人!」。紅森黒湖と屠桜ひな子の血生臭いお仕事のお話、それが『ムルシエラゴ』の大まかな内容となります。そのお仕事とは公立、つまり国から認可された処刑人、つまり人殺しです。黒湖がその人殺し。それも大量に殺人をしている危険人物であり、本来なら死刑ものなのですが、その殺害スキルを買われて、異常な殺人者を殺す仕事を任される事になる、という筋であります。なもんで基本的に黒湖の精神性が異常な中でこの漫画を堪能していかなければならないのですが、そういうタイプ、無茶苦茶なキャラが無茶苦茶するタイプの漫画が好きならむしろ好物です! って言えるかと思います。それに黒湖も相当いかれポンチですが、よしむらかなせんせ絵の色の強いひな子ちゃんも地味ながら確実にいかれておるので、メインパーソナリティは二人ともいかれておる、というので更に倍率ドン! な漫画となっております。流石に悪で悪を滅するというだけはあるいかれ具合です。この辺の無茶具合、いかれ具合から、『デストロ246』好き辺りには噛み合うものがあるかもしれません。
 さておき。
 1巻と2巻の同時発売、というのでどうして? と思ったら1巻と2巻にまたがるエピソード「殺人Praty」の為っぽいです。確かにこの回はこの漫画の酷薄さ、無残さ、モツさ、エロさがしっかり出ているし、色々と派生しそうでもあって名エピソードであります。特に黒湖の特殊能力と言うか異常に発達し過ぎた殺意へのセンスが予知能力レベルって話は、逆に言うとこいつ殺すの容易な事ではないにも程がある、という頂に立っちゃって今後どうするんだろう、と思わされます。その辺は伏線みたいな配置なのでフォロー入るのかもしれんですが、でも相当無敵ですよね、それ。ひな子ちゃんもひな子ちゃんで高校生っぽいのに運転技術は車からクルーザーまで幅広く可能、且つ超精密に動かせるのがこの回で見せつけられます。というか、崖の柵使って自転車でダイブ! って普通に死ねる行動で成功する辺りの技術と、胆力とは違う精神性が無茶なことこの上ないです。下手すると両者とも殺す相手より問題があるんじゃないか、と思うばかりです。
 それがきっちり出ているのが1巻の「「THE BAD DAY」」。あるレストランで強盗とかち会う黒湖とひな子ちゃんの行動、そして担当の刑事さんから語られる過去に起きた事件での無茶が肝。どちらにもでた台詞、「そうだね お疲れぇ」の表情の酷薄さ、片や犯人皆殺し、片や犯人皆殺しかけるという事態に対して、全く罪悪感無しの様を見せつける台詞であります。この辺でこの漫画がハマるかハマらないかのジャッジが行われていると思いますが、個人的な見解を申しますと、それゆえに非常に好みであります。最初からより、巻末にある読み切り版から読んでから読み進めた方がこの漫画の理解は早い気がするのが難点ですけどね。というか何故あんな配置に……。
 さておき。
 よしむらかな絵の表現を可愛い女の子ばかりしか知らなかったわてくしですが、意外と癖のある顔付きとか、もったりした感じの顔とかも出来るんだなあ、というのがこの漫画で一番強く理解した点。元々きららの方向でしか知らなかったので、つまり可愛い顔しか知らなかったので、その表現の広さを知らなかったんだなあ、とも。黒湖のいかれた具合の表情も、女の子の可愛い表情も、どちらも出来るって出来ているのだなあ。
 とかなんとか。