感想 くずしろ 『姫のためなら死ねる』1〜4巻

姫のためなら死ねる (1) (バンブーコミックス WIN SELECTION)

姫のためなら死ねる (1) (バンブーコミックス WIN SELECTION)

姫のためなら死ねる ? (バンブーコミックス WIN SELECTION)

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姫のためなら死ねる(3) (バンブーコミックスWINセレクト)

姫のためなら死ねる(3) (バンブーコミックスWINセレクト)

 大体の内容「こんな清少納言見たことない!」。現在において清少納言に面会した事のある人は存在しませんので、それまあ当然なんですが、それにしたって既存の清少納言イメージに対して大きく喧嘩を安売り大バーゲン開催中なのがこの漫画なのです。
 にしたって、清少納言が「ちょっと定子様の小さい手可愛いよね」(意訳)って文章を枕草子で残してるからって、その後に「ハァハァ」をつけてしまって清少納言がガチ百合の人で定子様に萌え萌えブヒブヒしてた、というのをまことしやしやかに漫画化するのってありなんですかねー! この現代日本というのは本当に魔境だぜー! という気持ちになりますが、それでもその想いはどんどんガチで不純且つ純になっていくので、なんというかこの人大丈夫かなあ、という気持ちで見ていける漫画ではあります。定子様に対する気持ちは本当に押し倒したい! でも! ってんで純と不純で構成されており、その辺で一気にいけないのは百合だから、その時代では、という部分もありますが、それしたらこの関係終わっちゃうしなあ、という部分もあるのかなとも。気持ちが直で繋がらないからこその持ち味だし。
 さておき。
 この漫画は登場人物が歴史上の人という事ですが、時代とか合ってない人もちらちらといる、そもそも紫式部清少納言が時代合ってない、けどその辺は平安時代オールスターめいた方向で、その方が華やか! と言う事でしょうか。そのせいで現代的な属性をガンガン詰め込まれて歴史上の人が崩壊してて、それもまたこの漫画大丈夫かと思わされます。登場人物が増え過ぎてる感もありますけれども、たまの有名人はゲスト参戦みたいな感じと受け取れば、基本は清少納言、定子様、彰子様、紫式部の4人体制ではあります。それでも基本の人間関係もゲスト参戦も直接文句を言う人が存在しないからこそ出来る悪魔的魔手であります。というかそもそもの清少納言が相当問題のある人格してて大丈夫なのかと。残念という便利な言葉が我々の切り札レベルの駄目さ加減。でも基本スペックは高いから余計に。この残念というのが非常に現代的だからこそ、それが平安時代ならどうなるか、という思考実験としても立ち上がっているという錯覚すら起きます。いいのかなあ。
 さておき。
 百合物としてはあちこちで矢印が生まれていて大変高めのアベレージを出しつつ、バカ物としてもきっちり高いレベルでお前平安時代だぞ! というのが出ている漫画でもあります。先にも書いたように清少納言が定子様好き過ぎるのが空回ってるんですが、それが百合としてもバカとしてもきっちり成り立っているのは中々面白い。清少納言は駄目で残念なのですが、それゆえにその定子様ハァハァの一人相撲は素晴らしく映えますし、それを諌める弁官のつっこみも綺麗に決まる。ある種安心感すらある駄目さ加減。でも、やっぱり子孫に訴えられないかとも思ってしまいます。まあ、先にも書いたように清少納言に会った事のある人は現在には存在しないので、実際はこうだったという可能性もない訳ではないですが、いやでもちょっと問題あるだろ、この清少納言
 個人的に好きなのは3巻の現実逃避の蹴鞠回。何そのキャプテン翼。というかバトル漫画。ばっかじゃないの!? 平安時代だって忘れてんじゃないの!? という言葉がすらっと出てきます。でも、それって今更だよな、って思った後に気づくんですけどね! いや、ホントバカ漫画だよなあ。そこで百合がガチで入ってくるから、くらくらするんだよなあ。そのしばらく後の定子様にラブられてる! って気づいて俺の勝ちだ! みたいなテンションになるとことかも凄かったですね。凄かったとしか言いようがないですよね。テンション高いというかテンションしかないというかもうなんなのこの漫画。
 とかなんとか。