感想 木々津克久 『名探偵マーニー』10巻

 大体の内容「因縁も絡まってくるけど、今回もマーニーにおまかせを」。
 いつも通り色んな厄介事に絡んでくるけど、その方向性が強まってきているのが最近のマーニーの周りの話。メカニックの話も、学校の話も、どっちも結構頂上に到達し始めております。メカニックの方も、学校の方も、望む望まざる関係なくマーニーに迫ってきております。そんななんかのっぴきならない状態になりつつあるのが、『名探偵マーニー』の10巻でのマーニーなのです。
 メカニック話はメカニックが二人いる、影武者がいるという話が確定し、元メカニックな鴻上がマーニーと接触して、マーニーの触れられてこなかった過去の話もちらりと。鴻上の影武者だった夜刀は少々常軌を逸しているのがその過去でマーニーが取らされた選択でしっかり分かりますが、マジお縄にしないとやばい奴だこいつ! ってなろうものです。そしてこの話があまりマーニーが思い出せなかったのもまた理解できたり。歳がいくつになったとしてもきつい選択肢を、小学生で、ってホント……。そこを塞いでたのもむべなるかなですが、今後の為に開く必要があったとはいえ、そこに踏む込む辺り鴻上も善人ではないですヨネ。人はいいけどいい人ではないな、とか。
 さておき。
 学校の話は学校を実効支配している学生群三巨頭の会合に呼ばれる段階で、学校におけるマーニーの名声もそこまでいっているんだな、と理解出来るものの、会話の内容ののっぴきならなさが学校を揺るがさんレベルでありまして、こんなハードな場所で立ち回らないとなマーニーマジ大変。でも、そこをきっちり締めれるからこそ、名声も高まったという側面もあるので、能力があればあったで結局大変な目に遭うのは避けられない、という人生訓すら感じます。とはいえ、このレベルの大変さをこの歳で、って今後のマーニーの生活とかどうなっちゃうんだろう。独立して探偵しても腕っこきとしてやってけそうであります。
 さておき。
 名探偵とは、というのがふと脳に浮かび上がり、特にまとまりがないのですがつらつらと。
 この<名探偵>という言葉には色んなあわいを含まれていますが、一番重要なのは<解決する者>だという事でしょう。その解決する、のラインが探偵物の進行によって変わってきている、という見方が出来るかと思います。犯人を見つける、が即解決で終われた時代から、そこから社会問題があり、という風にじりじりと移り変わって、あるいは最初からその方向は織り込まれていたけれど、進行によってそれが顕著になってきた、と即興では考えられますが、とにかく、今は社会の問題に密接しやすい解法になっている場合が多いのではないか、となると、『名探偵マーニー』はどうなのか。
 その解は案外簡単で、逆にそこまでいかず、事件そのものの解決をもってその回を終了します。その後どうなったか、というのがほぼ語られない。問題の解決以上の、こういう社会のどうたらという話には向かわない。さっくり終わらせる。それが『名探偵マーニー』の一つの特徴とでも言えましょうか。基本的に、相手の自供で終わる形ってのがないんですよ。マーニーが事件を総括するような台詞で終わっていくパターンが本当に多い。一応、それが正しいであろう、というのは分かるんですが、それゆえにこの漫画の特徴としてそれが立ち上がってくるのです。こうすると、理解不能の事もマーニーが理解不能ってなるので、ワンクッション置いてある形になるのかしら。その辺はやっぱ狙ってるよなあ、木々津せんせだし。
 さておき。
 今回の巻で一番好きな回はまさかの毛利さん回、file85『大人の世界』。毛利さんが捜査中に昔死んだと思っていた女性の姿を見て、から始まるハードボイルド。ホント、ここのハードボイルドっぷりが脇役な毛利さんを一気に魅力的にしてくれるから困ります。本当に何度も使っちゃうくらいハードボイルドで大人の世界なのですよ。うわー、こういう回やれちゃうんだー。って思いましたよ。バリエーションとして以上に存在感のある回だったかと思います。これで次の巻で最終なのかー。
 とかなんとか。