感想 余湖裕輝 他 『ニンジャスレイヤー』2巻

ニンジャスレイヤー (2)~ラスト・ガール・スタンディング (イチ)~ (カドカワコミックス・エース)

ニンジャスレイヤー (2)~ラスト・ガール・スタンディング (イチ)~ (カドカワコミックス・エース)

 大体の内容「名エピソード“キルゾーン・スモトリ"収録!」。というのはジョークではございません。忍殺世界の縮図が一所に凝縮したエピソードなのが“キルゾーン・スモトリ”なのですから。
 この回はネオサイタマの5%の上位であるカチグミ・サラリマン! その小金稼ぎのバイオ・スモトリ狩りのゲーム感覚的無残さ! 仕掛けもゲーム的! 声を出さないでも会話できる未来的ガジェット! とはいえその中でカチグミ・サラリマンの厳しい現状、下手に相手を上回るとムラハチという日本的因習の残滓! そんな中でバイオ・スモトリを殺しまわるけれども所詮モータル! メガコーポとニンジャの前には塵芥も同然! ミスをしてバイオ・スモトリ育成場、それはソウカイヤ・シンジケートが秘密裏に行っている研究の一端! それを襲ってしまい、ソウカイヤニンジャに無残に殺されるカチグミ・サラリマン! 残酷! 会社の名前を出しても、相手はもっと上のメガコーポ! 名前の効果無し! 攻撃もムテキ・アティチュードによって無効! もはやモータルに勝つ術なし! というのにそんなニンジャもニンジャスレイヤーの前では木端! ムテキ・アティチュード中は動けないのを逆手に取った高密度スリケン攻撃! ムテキ解除不能に対して連続打撃で惨殺! サヨナラ! という、忍殺の基本の流れがしっかり見せつけられる回なのです。そして最後の切なさ。昔を思い出しつつ、意識が消えゆく様の切なさといったら。こういう所も忍殺のらしさの一つ、モータルの悲哀ですよ。親が内臓を売ってまで、というのに、こんな所で……というのがもう。こういう救いがあればいいのにと思わせる内容が、本当にですね……。この短い、回にして二回分で忍殺の持ち味をしっかり見せるのは繰り返しになりますが上手いなあ、と。1巻の最後の「ヨロコンデ―!」から時間が経っているけど、そこについても具体的に話さないのも忍殺味。好きなエピソードを好きなように述べるという原作の方向性と、しかし時間の繋がりは感じさせるという細かいテクが綺麗に決まっているのも見逃せません。時系列的にこの後に収録されている“ラストガール・スタンディング”は繋がってるんだったかな? という気もしますが、その辺も抜かりないと勝手に思って、この項を閉じたいと思います。