感想 ノッツ 『ソラミちゃんの唄』2巻

ソラミちゃんの唄 (2) (まんがタイムKRコミックス)

ソラミちゃんの唄 (2) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「ソラミちゃんの唄が、響いていく」。ソラミちゃんの唄が、ソラミちゃんが広く世の中に出ていくように、外へ向かって響いていく。それが『ソラミちゃんの唄』2巻の概要なのです。
 個人的な感覚で恐縮ですが(よくある建前)、『ソラミちゃんの唄』は1巻(感想)の収まり具合が半端じゃないと感じてたんですよ。あれで終わっても、本当の所良かったんじゃないか、と1巻発売時頃は思っていました。だがしかし。
 2巻は大学に行く為にきっちり勉強したり宅録したりギター封印の儀したり勉強したりするのが前半、大学行くようになって更に周りの人たちも変わっていかないとな後半、という風ですがテンションというか基調は変わらない、ソラミちゃん味となっております。何の味だよ、というのは笑顔の涙の塩辛さと言いましょうか。そんな味です。何が言いましょうかだ。
 さておき、前半では大学に行く為の勉強をしっかりと、宅録もしてるけどしっかりとして、宅録を封印したりしてやっぱりしっかりして、そして大学に受かるまでのロードですが、1巻では存在感が薄かったソラミちゃんのお母さんも結構しっかり登場して後半への布石も打ったりしたり、ネモちゃんが今後会わないようにしますとか言い出す波乱もあったり。ソラミちゃんの周りも変わっていくのだ、というのがしっかりと打ちだされています。
 そして後半、大学に行くようになったソラミちゃんは、色々と直面することが多かったり。その一番は勿論、住み慣れた家を離れる、つまり部屋どころか家すら出るという流れ。1巻では完全なひきこもりで始まったこの漫画が、とうとう家から出よう、という話になった訳ですよ。思った以上に大事になった、とともに1巻の〆の、家にいるという情景から遠くに行く事になったと考えると、それも織り込み済みの展開だったのかな、と思わされ、ノッツせんせの凄みを感じたりも。あの納まりのいい終わり方すら、踏み台でしかないのか! という。この巻最後一個前の回の、最後のコマの、この家から、そしてこの部屋から出ていく、いなくなるというのが明確に打ち出されたその何とも言えない寂寥さ、皆納得ずくで出るんだから祝福すべきなんだけど、でもなんとも悲しさもある、というのが1ページ丸々の何もない部屋の絵で表されて、それでもう。なんか泣きたくなってきました。
 さておき。
 それ以外でも皆が色々と変わっていく、というのがより明確になるのが後半です。先に出番が増えてきたお母さんとは、1巻の頃に比べると飛躍的に話が出来て、そしてソラミちゃんの、更にお母さんの、思い出のある家を引き払うという選択に、ソラミちゃんの意見がきっちり聞けるまでになった、というのが大きいでしょう。この巻の中ではそれでもまだ危うい所はありましたが、それもじわじわとマシになっていき、というので、変化を感じさせます。
 ネモちゃんもこの漫画では大きく変わった一人です。ソラミちゃんの唄の超ファンとして家に転がり込むという危うい状態でもあったネモちゃんですが、前半にあった別離寸前を乗り越え、更にソラミちゃんの変化に触れ、己の道を探していこう、とするネモちゃんは尊いです。寝袋を脱ぎ去って卒業します! ってのにはやられました。ある意味、一番の殻だったもんなあ、寝袋。その次の瞬間にはまた寝袋(新作)になってましたが。戻んのかよ!
 さておき。
 最終的にこの漫画はソラミちゃんの唄で〆られますが、その唄はどこへ行くのだろうか、とか思ってみたり。この巻中盤でネモちゃんも言ってましたが、ソラミちゃんが、ソラミちゃんの見ている方向の唄がいいというのを、守れているのかどうか。まあ、その辺は、最終話でのソラミちゃんの語りから感じるに、全然大丈夫だろうという思いも持てます。それを持って、ソラミちゃんの唄はどこへ行くのか。その行く末に幸いがあらん事をと、思ってこの項を閉じたいと思います。