感想 下神木るこ 『ドミノキック 並べられたドミノをキックしたらどうなるのかしら?』1巻

 大体の内容「お嬢様の危険な破滅願望! フォローなるか!?」。正堂サエさんは日本屈指のいいとこのお嬢様。しかし、彼女には危険な趣味がありました。それは、ここぞと言う時に自分の全てをかなぐり捨てても、思った衝動に身を任せたいと言う並びに並んだドミノにキックを入れたいめいた破滅願望の発露! それを陰なり日向なりでフォローする執事の姫森さんの、今回のフォローは!? というのを毎度毎度して行く漫画、それが『ドミノキック』なのです。
 サエさんは小学生ですがパーフェクト小学生、あるいは超高校級の小学生です。ですが、その内に秘めた破滅願望はかなり強く、どうしてそんな事をこんな時に考えてしまうんだろう、と心の闇を感じるレベルですが、でも少し気持ちが分かる部分もあったりします。誰しも体面を気にして出来ない事を、してしまいたいという欲求。それは誰も言わないでも、でも誰もが少しばかりは持っている物かと思います。それが、サエさんはちょっと強過ぎるだけなのです。もっと端的に言うとぶっちゃけられないの! 私の中の破壊衝動! という『魔人探偵脳噛ネウロ』の変態犯罪者、爆弾魔のヒステリアが一番この子と近しいのではないかと、思ってみたりもします。あの衝動を開放しないと駄目なの! というのが素直に出てしまうという、ある意味子供らしい部分であるのかもしれません。最初の回での衝動が授業中に卑猥な言葉を、お○○○と発したいというので、そういう意味では超高校級の破滅願望というのもしっくりくるかもしれません。小学生ですが。
 さておき。
 そんな超高校級の破滅願望に対して、フォローを入れるのが専属執事の姫森さん。そのフォローリングがどのようなものか、というのは一話目でいきなり全裸で小学校に乱入、というのでかなりドン引きさせられますが、その後のフォローはそういう方向性が多いというか、新人にこれが基本のフォローだ! と全裸突撃してたりします。インパクトは確かにでかいので、お嬢様たるサエさんのフォローとしては順当なのかも、と思いだすかどうかでこの漫画についていけるかのジャッジが下されているかと思います。一応普通のフォローもあるにはあるんですが、どうしても全裸のジャイアンインパクトには霞むんですヨネ……。
 そして、フォローする人が姫森さん以外に出てくる事によって、この漫画のありようが重層的になってきます。新人で執事としては不適な部分もありながら、フォローリングの点では面白い人材として登場する淡路さんと、サエさんのライバルを自称したりしている愛田ミヅキさんがそうです。淡路さんは大局的なフォローは出来ないけれど、細かいフォローへの気が回り、愛田さんは天然な部分でサエさんのぶっこみをフォローする、というのが絡まって変なアトモスフィアだけどそのフォローがしっかり決まって蓋然性が高い展開になっていくのです。この回し方が綺麗に決まる副会長立候補回前後編はこの漫画の力が実はとんでもないのでは? と思わせてくれる物がありました。このクオリティが維持されれば、今後も安定出来るのでは、とも思うんですが、でも考えるの大変そうだなあ。とも。フォローのバリエーションがどうなるか、にかかってるから、ネタ切れしたら辛いだろうなあ。でも、限界点も見てみたいと思わせてくれるのでありました。