感想 高尾じんぐ 『くーねるまるた』5巻

 大体の内容「姉襲来! どうなるマルタさん!」。と言う事でこの巻最初の2話でお姉さん到来からの、帰りなさいからの、お姉さんの納得が得られる展開となり、後はこの漫画のいつもの感じがノリノリなのが、『くーねるまるた』5巻の概要なのです。
 お姉さん到来からの流れは、蓋然性が高いというか、今までのマルタさんの生活見てれば帰るのも大きな選択肢だよなあ、と思えているので、成程そうなるわな、なんですが、その帰還指令が覆る流れもまた、この漫画らしい蓋然性に満ちていました。確かにあまり裕福とは言えない、カツカツな生活しているマルタさんですが、それはそれで、お金では得られないような体験をしているのだ、ある意味では贅沢ですらある、というのは確かにその通りだなあ、と。マルタさんの生活がきつそうなのにきつそうに見えないのも、そういう部分、お金では得られない貴重な、自分だけの体験があるからなのかなあ、と感じさせてくれます。清貧というとちょっと違うんですが、でも豊かな体験のナカにあるのだなあ、と。そういうのは、なんというか憧れるものもあります。中々得られないがゆえに、ですね。
 さておき。
 この巻で好みなのはタレ味の野菜炒めの回。この漫画らしく食い意地の張ってるマルタさんが、ある店の野菜炒めの味が時々で違う事に気づいて、という回ですが、その細かな味の違いを理解するマルタさんの舌もさることながら、好みの味を作る人が居る日を狙って、というのがまたいいんですよ。普通はそこまで面倒をしてまで食うか、というのを、マルタさんだから、やるんだろお! という誰もが納得する形に持っていけるだけの蓄積がこの漫画にもあるんだなあ、と思ったりしたのです。ついでに、やっぱり基本暇人だよな、マルタさん、とも。でも、これもまた贅沢な時間の使い方であります。普段からそういうのを気をつけている、という心掛けの成果とも言えましょうか。そう言う意味では、マルタさんはその贅沢な時間をきっちりと楽しんでいるんだなあ、と思うのでありました。