感想 新久千映 『新久千映のねこびたし』1巻

新久千映のねこびたし 1 (ホームコミックス)

　大体の内容「やっぱり猫が好き！」。猫好きながら今まで、というかこれで連載取れるまで猫漫画は封印してきたという、どういう種族のガチなんですか！？　という意気込みがしっかりと、そして猫可愛いなあとが伝わってくる漫画、それが『新久千映のねこびたし』なのです。
　猫が可愛く描ける漫画家は値千金の者である、とは今俺が思いついた脊椎反射ですが、しかしそう言いきって全く問題ないくらいに、猫が上手く、可愛く、そして動物らしく描かれているのがこの漫画のいい所。小箱とたん『スケッチブック』のように生態をよく観察して、しかしマンガナイズドした猫もいいですが、あくまでリアル路線、猫はただ猫であっても猫猫可愛いというのをしっかりと熟知した手並みが、この漫画にはあります。その様はまさしくタツジン！　のそれなのです。本当によく見て描いているのが端々で分かる手並みなんですよ。猫の丸い感じ、くねる線の感じが大変いい。猫って本当にフォルムからしてエロいとすら言えますよね。フェチズムすらありますよ。それが猫らしく動き、暴れ、食べ、寝る。それをきっちり描いているのがこの漫画な訳です。そりゃ可愛いですったら。
　しかし、こうやって生態を見るというのはなんとも素晴らしいんですが、なんとも隔靴掻痒、もどかしい所もあります。つまり、手がかからないで猫の可愛さを得られるので素晴らしいんですが、やっぱり手をかけたいのにかけられないからもどかしい所もあるのです。手のかからない猫はいいけど、手のかかる猫はもっといいのです。むしろ手を掛けさせていただきたい！　この辺、猫を飼った事、あるいは構い構いした事が無い方にはわりかし通用しない空気があると思いますが、逆に言うと猫に構い構いした事がある方なら然り！　と言っていただけると思います。手のかかる子ほど、気にかかるし構いたくなるんですよ！
　とはいえ、新久さん家のせんちゃんの横暴というか暴れん坊っぷりは凄い。と小学生並みの感想が出てくるくらい凄いです。何せ描かれている中でも大変な暴れん坊っぷりなのに、大きくなるという言葉を越えて肥えてきていますからね。あれだけ動いてまだ足りないのか、この猫は、と戦くしかありません。噛み癖も暴れ癖も強いし、去勢したら、と思ったら特にそれでどうとも、だし。大変だなあ、新久せんせ。でも、吸い癖の時に魅せる顔とか、可愛いなあと。こういうのがあるから猫好きは止められないんだろうし、新久せんせもちょっと去勢の手術でいなくなったら寂しいよー！　したりするから、可愛いんでしょうねえ。
　そう言う意味では、猫好きが猫好き故に描く業の深い漫画なのが、『新久千映のねこびたし』なのかもしれません。