感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』4巻

ムルシエラゴ(4) (ヤングガンガンコミックス)

ムルシエラゴ(4) (ヤングガンガンコミックス)

 大体の内容「薔薇色の牢獄編と、DK編最終章」。3巻からの引き続きで<純潔の薔薇>に潜りこむ事に成功した黒湖、でしたが女の園であるそこで黒湖の理性が持つはずもなく……。という導入から、千代さんが黒湖を取り返しに乗り込みつつ、その陰で<純潔の薔薇>の裏にあるおぞましい事実が……。それが『ムルシエラゴ』4巻なのです。
 <純潔の薔薇>のおぞましい秘密、それは卒業という名目で園の者を離脱させ、たようにみせて、この組織の幹部であり取りまとめ役であるゴールドマリーさんによってグロい、でかいフックで串刺しという処刑をされ、その生き血でローズマリア様という名のゴールドマリーの弟――色々あって性転換+おてむてむえぐり取られたっぽい――の延命させている、というもの。まさしく悪夢の園でありますが、それに対して黒湖はというと、なんか洗脳めいた状態になっちゃってそれどころじゃない! という事に。そもそも警察が動いている訳でもないので、女の園でエロいモードし放題となっては黒湖が積極的に動く意味合いもないんですが、その上で更に洗脳状態、となって完全に使えない状況に。そして、この状況に対しての天誅というのも、ほぼ偶然が為しただけであるというのがまた無茶です。一応、愛する女である黒湖を自分と言う帰る場所に取り戻す為に千代さんが動くには動いたんで、それが回りまわってゴールドマリーへの天誅になるにはなったんですが、その後この<純潔の薔薇>がどうなったかは分からずですし、そもそもそういう惨事が起きた事すら知らないままの人もほとんどで、発覚した後もどうだったのだろうかと思うと、全体的にこの漫画のグロさを感じずにはいられない事態へと我々をいざなってくれます。というか、この黒湖が入るという件が無ければ連綿と続いてたのだろうか、と思うとうすら寒いものがありますし、ゴールドマリーさんが死んだ後、それに対して特に何もコメントとか感情の動きが見えない千代さん含めの面々もなんというか怖い。まともそうに見えた千代さんも速攻黒湖ぼこる方に行っちゃうし、慣れてるのかしら、こういうの。その辺もやっぱり怖いですね。
 しかし、そんなのはDK編最終章の前では霞む! とばかりなのが第27話「No(teat)drop.」。この回の肝でありグロでおぞましいのは、黒湖がりんごちゃんを口先三寸で、それも美しく聞こえる嘘の、と言うのも生ぬるい美辞麗句で自殺を思いとどまらせ、自分のもとに来させる辺り。りんごちゃんの父母を引き合い出しての言葉はしかし、鉤括弧付きの騙しの言葉、騙りの言葉。それでりんごちゃんを丸めこむ様はまさしくこれこそ醜悪、グロテスク、おぞましさなのです。ぱっと見感動の場面なのに心理的に外道〜〜〜〜〜! って平松伸二絵になって怒りすら湧いてくるんだから本当に気持ち悪いのであります。内臓が出るより、こちらの方が遥かに気持ち悪いのですよ。ここまで感情移入を拒むキャラクターっていうのもありなんだなあ、という目先を変えてやっと耐えられるレベルであります。
 というか、本当に黒湖って感情移入したくないキャラクターなんですよ。人物と言いたいけど言うとこいつが俺らと同じ土俵に上がる事になるというのがおぞましくてキャラクターって言いますけど、とにかく人殺しである部分に何一つ思ってないし、自分の命に対しても全然重きを置いてないし、というのが今まででも端々に出てましたが、今回のりんごちゃん籠絡で更に人の心に対しても何一つ尊重しないのが浮き彫りになったので、更に最悪キャラクターとして力強い一歩を踏み出した格好です。こういうキャラ造形ってありなのかどうなのか。自分は耐えられてるけど、耐えられない人もいるだろうなあ、とかなんとか。