感想 楯山ヒロコ 『主任の一ノ瀬さん』1巻

 大体の内容「一ノ瀬さん、見参!」。主任の一ノ瀬さんは株式会社ヒカリ飲料の営業課のエース。だけど、それを相殺して余りあるくらいには問題女史。そんな一ノ瀬さんがお仕事してるようなとぼけているようなするサラリーマン漫画。それが『主任の一ノ瀬さん』なのです。
 サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ、は懐メロですが、一ノ瀬さんの社会人生活は大変楽しそうです。モーレツ社員と言う訳ではない、というか植木の等な無責任系の、とはいえそれも深夜から朝にかけても仕事してたりと明らかに今の時代よりモーレツだったりしますので、それよりは更にお気楽極楽なお人ですが、仕事自体はきっちりこなしており、上司の滝田さんもちゃんとすれば営業課の仕事を一人でこなせてお釣りがくるくらいの力はあると認めている、けどノー天気でお気楽なので±0。お釣りくらい出して! と嘆いていたりするのであります。遅刻は日常茶飯事。飲料メーカーなので偶に試作品の酒が腹に入ってる事も。時折会議で寝てたり。その辺のする事もだいぶいい加減。なのに仕事はきっちり出来てついでに会長とも昵懇なので首にならない。ある意味夢のような立ち位置であります。色々とサラリーマンキャラクターと言うのはいますが、一番近いのはたぶん『釣りバカ日誌』の浜ちゃんでしょうか。あの作品のように釣りという明確なフックすらないのと、女性だというのが特徴と言えるかもしれません。
 明確なフック、キャラクターをつかむとっかかりというのは、この漫画は強くないと言えるでしょう。基本的にお気楽でC調の大人のお姉さん、というのはそれだけでフックになりそうですが、でもこの点! という部分は少ないのです。だが、それがいい。フック、とっかかりは逆に言うと突っかかり。その分飲み下すのに支障があるタイプの物になるかもしれません。そこが無い。それは大変重要な点なのです。『釣りバカ日誌』の浜ちゃんが釣りキチ過ぎて、と言う部分に引っかかる人もいるでしょうが、お気楽でC調だけなら、けらけらしているだけでいい。変な主張が無いので、飲み下し易い。そういうのが今様なのであります。それを堕落と呼ぶか、怠惰と呼ぶか、進展と呼ぶか、進化と呼ぶか。まあ、好きにすればいいと思います。
 さておき。
 黒ロン巨乳の大人のお姉さんである一ノ瀬さんのよく首にされないなあ。という振舞いをお気楽に描いたこの漫画ですが、とりあえず黒ロン巨乳の大人のお姉さんである一ノ瀬さんが大変いい。先に引っかかりが無いと書きましたが、それは魅力が無いという意味とは同義ではありません。ガチガチの型にはまらない、当意即妙とでもいうべき、しなやかな人となりが一ノ瀬さんの魅力なのです。社会人としては駄目なんじゃないかこれ。というレベルながら、社会人ならちょっと憧れる、駄目なんだけど仕事は出来るというファンタジーを体現しているのです。その性格は嫌味らしさも薄暗い所も無く竹を割ったというのがしっくりくるまっすぐさ。そのお姉さんが、楽しそうに仕事している、している? のをみると、なんだかとっても気持ちがいい。こういう人がいて欲しいなあ。という願望を、自分のそう出来なさが故にもありますが、でも素直に思う。ある意味ではファンタジーであるが故に高い癒しの力を感じるのです。後、黒ロン巨乳。黒ロン巨乳は七難隠すっていいますもんね。個人的にはそこだけでもう、満足するしか、ないじゃないか……。なんですが、本当に活き活きと楽しそうに生活してる(≠仕事している)のが大変良い。活き活きしている人はそれだけで周りにパワーを与えるなあ、と感じ入れます。このキャラクターをきっちり描ける楯山ヒロコせんせやはり達人か……。
 妄言はさておき。
 サラリーマン物で楯山ヒロコ味。出来るのか? 出来る! 出来るのだ! と言う事でこの漫画は当然楯山ヒロコ味です。どういう味か、というのを簡単に言うと、オチが雄弁である。と言えましょう。もっと砕けるとオチが一番うるさい。と言えましょうか。オチがうるさいのは普通に考えると当然のように見えますが、大体の場合、オチは落とす為に、まとめる為に一定の値以上に上がらない場合が多いのです。ですが楯山ヒロコせんせの場合はまとめる部分が一番広がっている、という仕手をかましてきます。それゆえに生まれる、雄弁さ。というかうるささ。これですよ、楯山ヒロコ味ハイパーン! と机打してしまうレベルは、この漫画でも健在です。この単行本の裏表紙の4コマでその感じは大体分かると思うので、気になる方は一回手にとって裏表紙みていただきたい。成程、これは雄弁。と思っていただけると思います。というか、完全に次世代のエース扱いな楯山ヒロコせんせの、そのエース具合が良く分かる逸品なんですよ! とステマなのかダイマなのかとりあえず推してるだけなのか判別付かない形で、この項を終えたいと思います。