感想 渡辺伊織 『ナノレンジャー』1巻

ナノレンジャー 1 (バンブーコミックス)

ナノレンジャー 1 (バンブーコミックス)

 大体の内容「名は名乗れぬのナノレンジャー!」。というので戦隊物めいたものか、と思われる題名ですが、その実は所謂キラキラネームと自分の実態とのギャップに苦しむ高校生のドタバタ。それが『ナノレンジャー』なのです。
 名前負け、あるいは名前とギャップがある、というのはキラキラネームという言葉が人口に膾炙するくらいには良くあることですが、元はガチのヤンキーという今ではレアな男子が輝蘭里(きらり)とかどうみても女子可愛い系男子なのに牙王(がおう)だとかで、名前強過ぎィ! にも程がある現状に対して、名前負けを払しょくしようとするけど、だがしかし! まるで全然! 名前に勝つには程遠いんだよねえ! なバタバタを見せるのがこの漫画の基本であります。その中で笑いあり、LOVEあり、笑いあり、しんみりありと笑い重点しつつも、名前と自分というのに真っ向から向かい合っている様は青春と呼べるでしょう。不動君と姫野君の友情とか、そこに絡まる七星さんの不動君ラブも見所。三角関係では一見無いのに姫野君が可愛いせいで三角関係に見えたり、女性の七星さんを差し置いて男性の姫野君が不動君絡みで浚われたり、助けに行った話がヒロイックというか姫野君ヒロイン過ぎるとか、不動君がウチに来ないか? って言っただけで不純! ってなったりするとかどうしろというのだ……。という気持ちになりますが。いやうん、姫野君、この漫画というか渡辺伊織漫画の中でも格段に可愛いですけども。間違うのも仕方ないと思うんですけども。でもそれで牙王って名前なんですよ、彼は! 喧嘩強くなって見返してやるんだ! とか最初は言ってたんですよ! でも、表紙で一番いい位置に居る可愛い子が男の子なんです。どうしろというのだ……。というか、彼は名前負けに対してどうそこを乗り越えるんだろうか、というのが始まってはいるものの着地点がまだ未知数ですが、そこはちゃんとやってくれるはずだと期待しております。渡辺伊織せんせに対する無条件の信頼です。『ギンダラとキンメダイ』も、2巻終了だけどきちんとしてましたしね! こういう、地味めで、ちょっと駄目な所の話を、きっちり魅せてくれますから。この漫画だと、その役は七星さんが主に担っている感があります。一番鈍くさい、鈍子と呼ばれる七星さんの奮闘は、まだ空回りですが頑張っているので応援したくなるんですよね。不動君も姫野君も、やっぱり応援したいですけど、七星さんはもっと応援したい。こういう地味めな女の子が頑張るのが渡辺伊織漫画だなあ、って思わせてくれる所です。
 さておき。
 慈島先生ですね。問題は。この人が不動君と姫野君の関係に掛け算を用いるのが、困りものであり、逆に芽を潰す効果もありというグッジョブであり、でも問題であります。最初に言っておく! 掛け算なら先にしておるわ! という様は見事な潰し方なんですが、でもそう思ってなかったのにそれ出されるとそうも見えるか、というのがこっちに理解させられて、ついついそう言う視点を持って見てしまう場面とかあったり。不動君が姫野君を不良から助ける、の慈島先生の妄想絵の姫野君が可愛い過ぎて堪りませんでした。先生視点だから余計にブーストが掛ってるとはいえ、あの可愛さはなあ。その後もそういうネタがきっちり繰りこまれて、全部見えていた。されるのが、逆に凄いと言うか、大盤振る舞いというか。いや、言ってて良く分かってませんよ。まあ、とにかくそういう慈島先生の存在が、この漫画の幅になっているのは確かで、そう言う意味では終始地味めだった『ギンダラとキンメダイ』とかとはまた違う側面が見せられているなあ、とも感じました。大胆なキャスティングが功を奏する典型みたいな、そんな感じ。今後、片思いの姫野君と方思われの慈島先生にラブの話が出てくる時はあるのか。とかも気になります。まあ、芽はないでしょうが。
 とかなんとか。