感想 吉野貝 『軍師姫』1巻

軍師姫 (1) (まんがタイムKRコミックス)

軍師姫 (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「軍師でもない。姫でもない。軍師姫なのだ!」。ということでお姉ちゃんの為! と女の子がきゃっきゃするけど何かがおかしい事の多いきららMAX原産のちょっと頭がおかしいタイプの漫画。それが『軍師姫』なのです!
 きららMAXという大地はほとほと変な漫画というのを欲しているのではないか、という疑念が最近はよく立ちあがっているというのは皆さんも周知のことと思います。今の二枚看板である『きんいろモザイク』と『ご注文はうさぎですか?』が可愛いとおかしいの巧緻な含有によってその地位を得ているといっても過言ではない訳なのです。片方である『きんいろモザイク』は原悠衣先生の元から含有していたそれを、その可愛い絵柄と可愛らしい話でオブラートして、でも漏れ出るおかしさが売りであり、もう片方である『ご注文はうさぎですか?』は逆に含有する多大な可愛い絵柄とお話に、おかしいをどうまぶしていけばいいのかというのに挑戦して出来上がったゴールデンバランスが売り。つまり、片や天然、片や修練による<可愛いがおかしい>という立ち位置の建造によって、MAXは成り立っているのです!(グルグル目)
 そんな中で、この軍師姫のやばさはきんモザのような突出性を更に鋭角に削り上げたものといいましょうか。とにかく一事が万事がおかしい話なんですよ。そもそも、お姉ちゃんの軍師となる、という段階でお前は何を言っているんだ? の画像が貼られる事態ですが、その未来像が幕府を開くとか言い出したり、軍師部がとんとん拍子で進んでいく過程で軍師の空さんが白スクの母になって占いで身を立てられるんじゃねえかこいつ状態になったり、ここを居城にする! と潜入(見た目でモロバレ)した屋敷を結局接収して軍師部の部室にしたり、まさに何が何だか。わかり辛い喩えをあえてすると、カブトボーグの中島島回のここのパーツの狂いは小さいけど、総合してみるとぶち狂っている、あの感覚。こ、こは何事……? と伊良子でなくても混乱する縦横無尽っぷりです。
 そういう話は脇に置きまして。
 この漫画のおかしさに対する可愛さ、というのはやはり個々人の想いの方向がすっきりしていて、そこ重点すると可愛く見えるな、おかしいけど。というのでしょう。メインパーソナリティの空さんのお姉ちゃん好きっぷりとか、空さんの弟子であるみこっちゃんの、その友達まっつんに対しての友誼とか、そんな皆が集まって軍師部が出来るという部分でのお姉ちゃん歩花の、空さんへの激励とか、いい場面はあります。絵柄が案外荒い部分もあるものの、基本的には可愛いの範疇でもあります。それに表紙及びカラーとかは、かなりいい感じであります。そういう基本筋は可愛い系漫画であります。でも、やっぱりおかしいが先立ってしまうんですね。それだけおかしい力が力強いと理解していただきたい。
 さておき。
 キャラクター話をすると空さんの軍師パワープレイが目立つこの漫画ですが、先にも名前の出たみこっちゃんというブースターの存在も無視できません。先に書いた白スクの母も、みこっちゃんのブーストで始まったことですし、その後も折に触れて空さんに加速度をつける仕事を見事なジョブしています。空さん単体でも脅威なのに、そこにブースターが居る。それがこの漫画のおかしさの源泉であるかと思います。まっつんも突っ込み役ではあるんですが、多過ぎる&力強過ぎるので止めるに至る場面が少ないのが、この漫画では不利に働いていて、確かな仕事をしているのに仕事が足りなく見えるんですよ。歩花さんは最終的なクリティカルな所できっちり止めるけど、それ以外はそんなに突っ込まないので、余計におかしいのが走り続けるのかなあ、とも。クリティカルな部分で止めれるから、基本止めないんだよなあ、歩花さん。
 とかなんとか。