感想 余湖裕輝 『ニンジャスレイヤー』4巻

ニンジャスレイヤー (4) ?アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ? (カドカワコミックス・エース)

ニンジャスレイヤー (4) ?アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ? (カドカワコミックス・エース)

 大体の内容「ヤクザではなく、天狗でもなく、ヤクザ天狗であった」。ただこの一言なんだよなあ、という忍殺のエピソードの中でも屈指と言えるマッドさと出自一切不明のままながらラオモトですら厄介に思っていたヤクザ天狗登場回が、この巻、『ニンジャスレイヤー アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ』なのです!
 とはいえ、この話はモータルの悲哀とニンジャの残酷さが大変よく出たエピソードでもあります。ソウカイ・シンジケートの暴虐に潰される哀れな、しかしインガオホーでもあるヤクザクランの登場と、ニンジャの圧倒的力。これを崩す手はないのか。無いのだ。ニンジャスレイヤーは死んだ! という導入から、突如乱入してくるヤクザ天狗=サン。サイバネで三下とはいえニンジャに匹敵する力を持つニンジャ狩りの使者! 助かった! と思ったらその行動のおかしさ、ヤクザが爆発四散したのに色々して役という呪いしたり、いきなり来ておいて金はもらうとか言いだしたり、駄目だって言ったら殴りだす、と思ったらすまん、すまんな。とかいって抱きしめたりとかもう無茶苦茶です。悲哀の話とか吹っ飛んでしまいました。
 とはいえ、この話はモータルの悲哀とニンジャの残酷さが大変よく出たエピソードでもあります。タロ、ジロ、サブロの三人兄弟の話は、ニンジャの力を得た者がどうなっていくか、というのをしっかり描いており、その力を得たジロとサブロ、いや、グリーンエレファントとガスバーナーがどんどんと暴虐を働いていく、そしてそれを止められないどころか命の危機にすらなるタロ。かくもニンジャというのは人の心を狂わすのか。そういう部分が提示されている回なのです。そして、金の為にハッカー道場を襲い、先のヤクザをのめしていた、その前に、ヤクザ天狗! やられるグリーンエレファント、ジロに対しなのも出来ないタロ。そこからのタロのジェットコースターの最終着落地点への加速が半端無く、最終的にニンジャスレイヤー(生きていた!)がガスバーナー、サブロを殺そうとするのを、本当に命がけで止めようとして、しかし敵わずのめされ、サブロも目の前で、となってまさに悲哀であります。ニンジャの前には単なる人間は無力、というのを表裏一体で魅せるのがこの回の最大の見所でしょう。それでも、サブロの前に立てただけ、タロはまだ進めるのではないか、という気持ちにさせてくれる辺りがいいですね。問題はその前段階でヤクザ天狗がやっぱり狂人であるのがはっきりするシーンが残っていることですが。なんかヤクザ天狗の国があるみたいな変なこと言いだしてて、いい意味でも悪い意味でもヤクザ天狗回として記憶に残るのでありました。
 さておき。
 漫画化した良い面と悪い面は複雑に入り組んでいますが、良い面のヤクザ天狗登場シーン、の2ページ使っての顔から突っ込んでくる、その瞬間、窓ガラスを突き破る天狗鼻の無条件のマッドっぷりはマッドですね。あの瞬間の、なんだか知らんがとにかくヤバい! という雰囲気は漫画ならでは。余湖せんせも苦心したらしいですが、それが奏功しています。漫画化として正しく、この話のインパクトを作り上げる余湖せんせ達には今後も忍殺描いてもらいたいですよ。