感想 山東ユカ 『トリセツなカテキョ』3巻

 大体の内容「春吉と井原先輩の道行に幸あれ!」。春吉と井原先輩のでこぼこ(主に成績的な意味で)関係もこの巻で終了と相成ります。最初の頃の春吉と井原先輩のでこぼこ感は、この巻ではだいぶん少なくなっておりますが、その分恋のお話としてきっちり立ち上がっております。井原先輩と春吉の関係は、井原先輩の卒業を迎え、どう変化し、そしてどうなったのか。それが『トリセツなカテキョ』3巻の勘所なのです。
 とはいえ、その部分はこの巻終盤戦を前にある程度片が付きます。女豹こと桜川先輩の猛攻も、春吉はきっちり、ちゃんと気持ちを込めてごめんなさいをしております。桜川先輩的にはその言葉は出さないつもり、向こうから籠絡出来たら、という腹積もりだったようなので、ある程度覚悟はできていたでしょうけれども、やっぱりあの場面というのは切ないものがありました。春吉が馬鹿だけどちゃんとした奴だからこそ、桜川先輩も惚れたのだし、だから返答がごめんなさいになるのも、でしたでしょうが、それでも辛いんだろうなあ、と。井原先輩に告白した事を伝えて動揺を誘ってたりは、最後の、登場場面的にも、なけなしの一打だったのだろうな、とか考えてしまいます。それを伝える声が涙声だった、というのでもう。どちらかはこうなると、分かっていても切ないものです。
 そういう切なさを脇に添えつつ、春吉と井原先輩の関係は、先にも書いたように終盤戦を待たずして一つの区切りを迎えます。井原先輩が、とうとう告白をしてしまうのです。正確には告白まがいというか、それ通じてる? なんですけれどもこれには驚きました。そっちから言うタイプじゃないんですよ、普段なら。でも、桜川先輩の事とか、自分が春吉が好きなのだと自覚していたりだとか、しばらく会えてなくて更にこれからも会えなくなる、というのでとうとう口に出した、という所でしょうか。それに対する春吉のお答えも、ふるっていました。もう、完全に両思いじゃねえか! 今まで見てきたからくっつけばいいと思ってるけど、でもなんというか、爆発しろ!
 というのに、ここで井原先輩は卒業していきます。そして遠い大学に。と言う事でどうするか、というのがこの巻の終盤の基軸になります。自分の知力では井原先輩のいる大学には行けない。どうあがいても無理。なら、スポーツ特待生があるじゃない! というのに気づいてしまうのです。そして地味に伏線として張られていた剣道の話がここで一気に主軸となります。ワザマエ! 井原先輩があんまり出ないので本当に流れを消化するという部分もありますが、それだけに蓋然性が高いのも事実。そして、その為に努力する春吉はかっこいいのであります。惚れた女の為、と書くとそれで大学選びとか! って普通ならなりますが、春吉のガチの頑張りを見ると、それなら許せる。という気持ちにもなるのです。この漫画に付き合ってきた分、思い入れもあるんでしょうけれども。
 そんな訳で、この漫画の最後の流れは勿論、告白です。既に井原先輩が告白した気もするんですが、春吉の方から、積年の(一年だけど)分の想いが炸裂します。大学入学初日にいきなり告る! というのでもうね。なんだお前、分かってんじゃねえか。そして、ここに到達出来て本当に良かった。春吉、井原先輩を末永く幸せにするんだぞ!
 とかなんとか。