感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』5巻

ムルシエラゴ(5) (ヤングガンガンコミックス)

ムルシエラゴ(5) (ヤングガンガンコミックス)

 大体の内容「雨の誘拐殺人編! 他一本」。幼女の死体が発見される。それには素手による絞殺の痕跡が。しかし、物盗りとも復讐とも違うその所作に、警察陣は戸惑い、そこで黒湖が投入され、それによって真実がじわじわと、浮かび上がってくる。その犯人の目的とは……。という始まり方なのが、『ムルシエラゴ』5巻なのです。
 今回の犯人の目的は謎めいているものの、それでもわりと初手から理解されます。昔落ちぶれていた時に、励ましてくれた幼女にまた会いたい。それが動悸と言えば動機です。でも、だからって浚っていい訳ないやん! 殺していい訳ないやん! という正常の突っ込みが通用する状態ではないのがこの犯人。最終的に判明する、子供が居ないとあの世で遊び相手が、というので大量に殺した子供達の安置された部屋は狂気の産物。そしてもう一度会えたから、一緒に死のうというのも狂気の産物。そこまでいってたのか、という驚きもありますが、一応伏線として大量の長靴がそこらに映っている場面もあるので、そこを再確認すると怖気振るうものがあります。人が信じられなくなって、辿りついた先がここ、って、コワイ!
 が、今回も一番の厄種は黒湖。浚われた子の母親を巧妙にたらしこむのはまず初歩。その人、実は今回の犯人を励ました子が成長した姿、を使って、犯人に絶望のどん底を味あわせて殺す、というのを見せつけます。特に名前も名乗らせないし、気持ちも届かせないどころか恨みの目で見らえるようにお膳立てするし、本当に残虐非道。最悪の手筋です。更に今回は凛子ちゃんの初陣という側面もあり、その才能を試す、ある意味試し割りの要素も強かったり。殺すの余裕だから、というのが伝わってきます。銃撃では捕まってる子供が危ないという判断があった、というより、最後の串刺しをしたいという欲求の方が強かったんじゃねえか、とも。オールラウンダー殺人鬼としての茶目っ気でしょうか。嫌な茶目っ気です。
 さておき。
 今回、<純潔の薔薇>編の後処理についても話が出ます。流石に地下にあったアレの事は分かってしまったようで、しかし警察に言っても既に首謀者は死んでるし、他の子は身よりが無いし、なので蓋をする形になった模様。しかし、あの薔薇は大変麻薬性の強い物だったらしく、以前のレスラー暴走の時の麻薬<チェザーレ>の原料なのでは? と当たりを付けられるんですが、しかしそうなると、あれをどこで精製していたのか。植える所のと肥料(婉曲表現)の場所だけだったみたいだし、そして定期的に売って十名近くが一緒に優雅に生活出来るレベルの資金が入ってたみたいだし、これは相当裏がある可能性が。思ったより遠い所までいくのか、この漫画。あ、後、洗脳されてた、というのは違ったんじゃないか? と追及されてました。そしてそれが事実っぽい。洗脳されてたのが解けられた! になれば殴り半殺されないんじゃないか、とか考えていたみたいでした。なんか洗脳って怪しいとは思ってた、いや、後出しされて乗っかってじゃなく、本当に胡散臭いと思ってましたよ! とあわあわしてみたり。まあ、洗脳されて無くても結局ぼこられてたから、インガオホーですが。
 さておき。
 他一篇の話もしておきますが、あのスナイパーさんが名無しの人とクズを狩る話でした。こうやってクズ狩りしているのか、それとも今回は何か意味合いがあったのか。名前を確認していた辺り、狩りをしている感じではあります。どっから名前と居場所が流れているのか、が重要な点になりそうな。茶々さん? ちゃっちゃんなの? 前からちょっとそれっぽい演出があったけど、そうなのかしら。意外と早く札切ってくるなあ、とかなんとか。