感想 イセケヌ 『びあ充!』

びあ充 (IDコミックス/REXコミックス)

びあ充 (IDコミックス/REXコミックス)

 大体の内容「ビール飲もうぜ!」。ぼっち癖のあったあさひさん。一念発起で酒屋にアルバイトでいくことに、なんだけど、そこは立ち飲み化なビール専門店で人もあんまり来ないとこ。そして店長が幼女に見える飲んだくれ。でも、あっさり気に入られてアルバイトOKに。そして始まるビールとの付き合いと、店長たちとの付き合い。それをゆるいギャグ調でやるのが、『びあ充!』なのです。
 基本的にこの漫画はゆるい日常系と萌え4コマという分類が可能な漫画ですが、扱う題材はビールで、そこが一気に大人味であります。酒飲み漫画も最近は結構ありまして、その一部でもあるんですが、雰囲気は飲兵衛のゆるさではないのがポイント。そしてメインパーソナリティのあさひさんが下戸であるのがちょっと違う所。その内じりじりとですがビールに慣れていくんですが、それでも油断するとすぐ舟を漕ぐ弱さ。でも、着実にビールが飲めるようになっていくのを見ると、妙に応援したいと言うか、声援を送りたくなるのです。特にチェーン店ながらラーメン屋で餃子をアテに飲む回などは、色んなつまみで飲んでる人を見て私も! ってなるとこが可愛くて喃……。ある意味大人の証である酒が飲める、というのを初歩から登っていたのを見ているだけに、そういうのに慣れていく様というのは、いいものです。
 他にもメインの4人、あさひさん、店長、蝦洲さん、珊酉井さんがびあ充の会結成を祝してグラスをそれぞれ買う回も良いものです。日常系として、そして仲の良さの目安として、分かり易い一品であるなあ、と。皆でび、あ、じゅ、うの一文字ずつのプリントをする、というのがまた仲良きことは美しきかな。基本的にギャグ調の漫画ですが、こういう部分でほっこり出来るのがいいです。飲みになると蝦洲さんがセクハラおやじになったり店長さんが飲んだくれになったりするせいで一気に混乱の巷になりますが。蝦洲さんのセクハラおやじネタと店長の飲んだくれネタとあさひさんの引っ込み思案ネタと珊酉井さんの人力車ネタでギャグ面は回っていましたので、セクハラおやじになるのも飲んだくれるのもしょうがない。あさひさんが出来る妹に頭が上がらないのもしかたない。でも寅吉さんの速度はおかしい過ぎるのでどうにかならぬか。ギャグ漫画だからいいのだけども。
 さておき。
 この漫画の肝であるビールネタは細かく色々と。特に描き下ろしの部分でネタ濃い目にしておりました。ビールの醸成の違いによる種類とか、クラフトビールの話とかやっていて、初手として知るにはいい物件であるな、とも。というかそれを見てビールの事調べたくなった自分みたいなのもいます。あんまり飲めないけど、ちょっと飲んでみたいなあ、って思わせる。そう言う意味ではちゃんとびあ充! な漫画であるのではないかと思います。
 さておき。
 この漫画は、元は一迅社じゃないとこで連載されていた漫画で、単行本も出ず途中打ち切りとなったものです。それが何の因果かマッポの手先じゃねえ一迅社が身受けして、こうやって単行本が出された、という顛末な訳ですが、それ故にちょっと太いです。全18話と描き下ろしが10ページ程ですから、力の入れようを感じますよ。というか、これが単行本化しただけで、超嬉しかった、雑誌を途中から買わなくなって追ってなかったら打ち切りになっててアイエエエエ!! ってなった俺のような人には堪らないものがある噛み応え。滋味溢れる、そして優しい味わい。基本ギャグ調で最後までバタバタした漫画ですが、それがいいのですよ。たまにほっこりさせられて、楽しくて、嬉しい。見ていて、ビール飲みたくなる。それも背伸びせずに、いけそうなのから入っていったらいいんだ、と思わせてくれる。そういう貴重な漫画であるなあ。
 とかなんとか。