感想  『城下町のダンデライオン アンソロジーコミック』1巻

城下町のダンデライオン アンソロジーコミック (1) (まんがタイムKRコミックス)

城下町のダンデライオン アンソロジーコミック (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容もなにもアンソロジーだよ! ということで、きらら系列アニメ化のご褒美タイム。それが『城下町のダンデライオン』の在り様なのです。
 『城下町のダンデライオン』の良い点である所の、登場人物の立ち上がりっぷりが、このアンソロジーでは上手く使われている印象です。ただ、その立ち上がりっぷりが際立っている人に登場回数が偏るという形となっております。計測した結果を見て行きましょう。

人物 登場作数 登場コマ数 傾向
6作 13コマ 細かい所に出ているものの、メイン回もないと言う不遇
6作 56コマ メイン回は一つだが、細かいリリーフが光る
7作 49コマ 思ったより少ない出番。だがメイン回もある
9作 196コマ 不動の主人公。8割がた出ているしメインでなくても出番がある
7作 85コマ 出番は多いが岬のバーター感がある
6作 102コマ 茜の次の登場コマ数。メインも二回ある優遇っぷり
6作 47コマ メイン回は一つ。細かい所で出れてないのが響くか
5作 90コマ 栞とバーター感あるが、奏さん回で光る所があった
7作 98コマ メイン回二回と、地味に出番が多い。細かい所でもコマ数を稼ぐ

 傾向で軽く書いてますが、やはり茜さんの登場回数の多さと、葵さんの登場回数の少なさが際立ちます。というか、葵さんはイラストの方でも一枚あるというのに、メイン回無いってのは一体どういうことだ! という気もします。作中でもそれほど優遇ではない、力が強過ぎる感があるからあんまりメイン回がなかったのが地味に響いているのでは、と邪推します、後、奏さんが案外コマ数が伸びなかったのが意外でした。結構本編でもメインの回はあるのになあ。メイン回というと栞ちゃんが本編でそれ程出張ってないのにアンソロでは大分活躍しているんですヨネ。キャラ人気とはこういうものか……。
 さておき。
 好きな話について語ると、同時に福品君の話になります。つまり柊ゆたか『茜ちゃん後ろ!』と鈴城芹あなただけ見つめてる』の話に。
 前者は『城下町のダンデライオン』の良さをきっちり出した、本編のある一話としても十分で問題ない内容。過不足がない見事な仕上がりであります。あー、ちみっこ茜ちゃん可愛いんじゃー、でもいいし、きっちり人を助けるのに躊躇しないところもあるし、ちみっこになったせいでスカーレットブルーム眼鏡装備が出来ない様も可愛し、能力のせいでそうなっているというこの漫画のらしさもあります。本当に良い仕上がりなんです。柊ゆたかせんせ、きららでまた描いてくれねーかなー。新作が電撃大王だったかでやってたっけ? まあ、この場には関係ないのでそれは置いて追いましょう。それより福品君ですよ。彼の視点によって、茜さんの可愛らしさ、普通も可愛いけど今の状態もいいんじゃー、というのが明確にされる、という正しく視点キャラとして立ち上がっているのがよいのですよ。見守る彼の存在が、茜さん可愛いをしっかり見せる。そういう手管と言えましょう。上手い喃……。
 後者の『あなただけ見つめてる』はこれも福品君が見る話ですが、こっちは国家システムを使ってみる、という『城下町のダンデライオン』の裏面を妄想して見せるという仕上がり。監視カメラというのが原作ではあまりフューチャーされない要素としてあるのを、福品君の助言を絡めることでしっかり存在を忘れさせないするという技を見せています。その上で、福品君が自分のする見守ると言う行為と、この国家組織で見守るという行為に差異を、違いを感じて関係するのをやめる、というある種成長を見せる所もよいですね。こういう使われてない部分を活用したり、理詰めしてくるのが鈴城芹せんせのよい所でありまして、それがきっちりでたこの作品はだから印象に残るのです。
 この辺以外もやはり家族間の話が多いアンソロであります。もうちょっと破滅的なというか暴走的なのも見たかったですが、それはカバー下のあfろせんせの作品が十分補っているので、それで満足しました。もうちょっと、あるいはカヅホせんせとかが来たら、どうなっていただろうなあ、とか夢想をして、この項を閉じたいと思います。