感想 鳴見なる 『ラーメン大好き小泉さん』3巻


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ラーメン大好き小泉さん(3) (バンブーコミックス)

 大体の内容「小泉さん、大阪進出!」。と言うほど大げさなことではないのですが、それでも大阪で、食らう! という小泉さんの食欲が収まることを知らない大阪回などがあるのが、『ラーメン大好き小泉さん』3巻なのです。
 今回も小泉さんがただひたすら食べる、それもラーメンを食べるというコード進行は全くぶれません。小泉さんが出て食らう! 基本的にこれだけです。しかし、相変わらず小泉さんの食いっぷりは華があります。女子高生がただ食べているだけなのに、それが美しく、可憐であるというのは中々得難い経験です。ドラマの方はドラマの方できりっとした鋭い冴えがありましたが、こちらは同じ冴えでもより柔らかく、儚さすら孕んでいるけれども、でもその実は力強い食いっぷり。そういうギャップがあります。ドラマはドラマ、漫画は漫画! というのをきっちりした仕事と言えばいいでしょうか。変にドラマが漫画に寄らないで、つまり和顔の金髪という無理をしないで、きっちりと小泉さんを別の形で作り上げなおしたのが奏功したという印象すら持ってしまいます。そう考えるといいドラマ化だったんだなあ。
 というのはさておき。
 今回も全編に渡って小泉さんがラーメンを食べ歩くだけの漫画なのは先述ですが、今回の巻では大阪に行って食い歩きをしている回がマストではないかと思います。あちこち食べ歩いている途中で出会ったお姉さんと、何故か一緒に更に食べ歩く訳ですが、その中で小泉さんは何するでもなくラーメンを食べ歩く。なのにその中で出会ったお姉さんが一つ考えがまとまっていく。というのが中々変なリズムとして挟まる、端的に言うと変な回でした。お姉さんは色々と納得したみたいですが、小泉さんは基本何もしてないというか、ラーメン食べてただけですからね。お姉さんと話す時もラーメンの話題しかしてなかったですし。人生相談めいたトコ全くなかったですよ。この辺りのブレなさは本当に素晴らしい。そこまで踏み込むのはマナー違反だ、というのがあったのかなかったのか、ですが、多分ラーメン食べたいのが強かったんでしょう。
 さておき。
 今回の大澤さんは兄貴出てきたりお姉さん出てきたりと、自分以外の所がクローズアップされています。しかし、今回良かったのは小泉さんが病み上がりで、今日やっとラーメンが食べられるんだ。だから追いかけまい。とする所。大澤さんが、構いたがりで常に小泉さんに一線引かれてる感のある大澤さんが、ガツガツ行かない!? と、中々驚愕しました。ちゃんと人の気持ちを想いやれるお人やったとは……。と思ったら一応つけていたりする辺りでお前ー!? でありました。とはいえ、その回の小泉さんのラーメンがやっと食べられる、という喜びが高まり過ぎて一すすりで涙が、というのを見逃すのは確かに勿体ないですから、気持ちは分かる。それでこその大澤さんとも言えますし。このバイタリティは見習いたいような見習わない方がいいような、そんな気持ちになります。
 という感じの巻でありました。