感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』6巻


MURCIÉLAGO -ムルシエラゴ- 6巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「女学園はレズの世界。そのまさかさ!」。ということで黒湖とひな子ちゃんが絡む所では百合の花がまさしく百花繚乱する、そんな印象の『ムルシエラゴ』6巻なのです。
 基本的にこの漫画の百合レートを一人で爆上げしているのは黒湖なんですが、今回はその面は抑えめ。ありますけど。開幕レズセクセルするけど。ですがそれよりも、この巻で登場の子達の百合具合が一段抜けております。
 まず、凛子ちゃんの編入したまりも学園初等部の空ちゃん(5巻で浚われてた子)とその友達の観鈴ちゃんの百合っぷるとしての出来上がり具合がヤバいです。観鈴ちゃんの「大人になったら空とケッコンするから」という衝撃的な発言がそれです。お前は何を言っているんだ? とどこかの格闘家顔になる所ですが、それも観鈴ちゃんだけがそう思っている訳ではなく、空ちゃんもそのつもりっぺれえ、凛子ちゃんとちょっといかがわしい恰好になってた観鈴ちゃんを見てにこやかに怒りなさるという局面がある段階でガチやん! とビビりが入ります。ただ、こっちはまだ陽の百合と言える段階であります。まだ陽なのです。それだけで今回がどれだけ百合地獄かお分かりいただけるかと思います。
 さて、陽の百合と言いましたので、当然陰の百合、後ろ暗い百合があるのは御想像通りです。それが皆子さんと風莉さん。それもいじめの構図で皆子さんと親友のはずの風莉さんがその首魁、というよくある形なのが、むしろその構図が皆子さんには堪らなく、という段でビビらされてからの、それが裏返って生殺与奪権を皆子さんが奪う形にもっていくという格好で、これは陰の百合と言わないといけないとしか言いようが無い業を見せつけられます。生殺与奪権を奪ってからの皆子さんが興奮していく様は、日の中では観る事の出来ない、実際体育倉庫内という暗がりだからこそのもので、故に業という言葉が出てきても仕方ないレベルのものであります。そして最後に黒湖の問いに対してその生殺与奪権を行使するんですが、その解答もまた、陰としか言いようが無い。確実に歴史の闇に葬り去られるタイプの話です。でも、百合です。生殺与奪権が裏返ったという形からの、命がけの百合。はい、無茶苦茶です。
 さておき。
 『ムルシエラゴ』というと黒湖が“最悪”であるという前提が、少なくとも私の中ではある訳ですが、今回もその“最悪”であることにぶれる所はありません。そう思う一助になったのは、爆弾事件によって混乱の巷になった学園で、誰も怪我はさせない、と言った口で人をぶっ殺している所ですね。殺さないとは言ってない、ってそうだけど! 倫理的におかしいですよ! という言葉も黒湖には遠いものでしかありません。その後も二人残ってるのも殺そうか。ってなってるし、相変わらず無茶苦茶です。しかし事件は鮮やかに、且つ自分の思うように解決するから、本当に性質が悪い。だからこその“最悪”なんですけれども。次の話は最凶最悪の相手らしいですが、あの悪辣で“最悪”の黒湖を越える事が果たして出来るのかどうか。期待して待つ辺り、自分もこの漫画に毒されている感があります。遅行性の毒めいたところあるな……。
 とかなんとか。