感想 増田こうすけ 『ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々』2巻


増田こうすけ ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々 2
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 大体の内容「これが、ギリシャ神話なのか!?」。ギリシャ神話に著作者がいたら絶対に謝罪と賠償を要求されるよな……、というギリシャ神話をモチーフに、そうモチーフにしてギッタギタにした漫画。それが『ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々』なのです。
 この漫画、神話に忠実な部分もあるんですが、それはギャグ漫画としてきっちりと立ち上がるからやってる、という部分でもあり、基本的にはギリシャ神話の皮をかぶって無茶苦茶なキャラクターがバチャバチャする漫画であります。特に人物や神々の人としてのポンコツ具合は毎度素晴らしく、特に愛の神エロスは秀逸です。独特のエロに対するモチベーションの高さと、そう見せまいとしている様の二律背反がこの神のキャラクター性を駄目神にまで押し下げている辺りが素晴らしい。この漫画の神々も人々も全体的にまんべんなく駄目なんですが、その中でもトップクラスなのが愛の神エロスです。次点は自分の醜さに気づいたりするけどすぐに元のナルシスになるナルキソッスと、すごいよわい上に口では勝ったと言い張る軍神アレスですね。これぞまさしくカリスマブレイクです。
 そういう神々や人々が行うのは、日々。つまり単なる日常です。偶にモンスター倒す場面とかありますが、それがほぼ偶然だったりする辺りがこの漫画の揺るがないところ。その単なる日常も、登場神及び人物がへっぽこなのですげえグダグダ。この2巻ではミノタウロスを1巻で倒したテセウスが講演を、というのがあるんですが、その語りの駄目さ加減、ワーッとかなんだー? とかで具体的なことなんもないというアレさ加減でヘルメスに心の中で殺すぞ……。って言われててもう駄目。確かにどうしようもない空間でしたから気持ちがよく分かります。
 さておき。
 この漫画は1巻からもそうですが、大分重層的になってまいりました。増田こうすけせんせの漫画は今までは一回一回の読み切りスタイルばかりだったので、積み重ねギャグというのがあんまりなかった訳ですが、この作品ではそれが解禁! されております。それが特に色濃くでているのは、先にも書いた愛の神エロス。もう登場するだけでネタの方向性が分かって安心出来るから困りません。それでもまだまだ方向性はあるんだぜ? というエロ物件に食いつくギャグの形は様々でやるなあ、と。首を亀みたいに長くするネタは大変良かったです。気持ち悪い! というのも今までの積み重ねでそこまでやるのか、と思い知らされるんですよ。他にもイアソンシリーズもよい内容でした。いつになったら旅に出るんだこいつ……。というのが素晴らしいものです。口だけもここまでくると心地よさすら感じますよ。そういう積み重ねが出来るようになって出来るようになったネタを味わえるのが、『神々と人々の日々』の良さなのです。