感想 ぬっく 『朝日奈ひなたは瀬賀くんが好き』1巻


ぬっく 朝日奈ひなたは瀬賀くんが好き (1)
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 大体の内容「朝日奈さん、猛り過ぎ!」。朝日奈ひなたさん(以降ひなたさん)は同級生の瀬賀くんが大好き。大好き。大好きおあ! という内容をやっていくのがこの漫画、『朝日奈ひなたは瀬賀くんが好き』なのです。
 この漫画の基本テーゼはひなたさんが瀬賀くんを好き好き大好きSSDということです。他の男子なんて目もくれねえ、瀬賀くん以外はモブも同然! という好きっぷりです。実際の所、瀬賀くんは他の女子、ひなたさんの友達のちずるさんや胡桃さんからするとモブっぽい、荒ぶるひなたさんが目立ち過ぎて記憶に残り辛いにしても、らしいんですが、そんなことは恋する乙女にはモーマンナッシング。その姿を見つければふひゃーとなり、その声を聞けばきょえーとなり、一緒に歩けば楽しくて、遠くから見てればドキドキする。そうとしか言いようがない気分になるひなたさんが大変可愛いのです。そのテーゼ、イエスだね! という言葉も自然とでようものです。伊達に表紙で正々堂々と「好き」って言ってるだけはありますよ。あまりに正々堂々過ぎて今回の書影はでかいのを使ってしまいました。
 さておき。
 この漫画は先に書いたようにひなたさんが瀬賀くんに好きー! する漫画なわけですが、実はそこばかりを集中的にするわけではありません。どちらかというと、日常系漫画としての立ち上がりの方が強い漫画だったりします。基本としては、ひなたさんが瀬賀くんー! しつつ、周りの友達二人、ちずるさんと胡桃さんがフォローしたりフォローされたりする。そこに瀬賀くんが絡んだり絡まなかったりいやでも絡んでるよしたりする漫画だったりもします。一話目は特に瀬賀くんの存在感が強いんですが、それ以降は三人娘でぐだぐだする所も増えていきます。そのぐだぐだとしたところのテンポというのが良いんですよ。的確なボケに的確なツッコミ、あるいはツッコミきれずが決まっていく様は見ていて清々しいという気分にさせてくれます。それがいいのです。
 そして、ひなたさんの瀬賀くん好きー以外の部分でスポットが当たることで、ちずるさんと胡桃さんのキャラの濃さというのが厳然と立ち上がってくるのです。ちずるさんはダイエッターで妹大好き。胡桃さんは小心者で男性アイドル大好き。その面がひなたさんの野性味めいてて瀬賀くん大好きと渾然一体となって、一つのハーモニーを奏でてこの漫画の味わいを濃くしているのです。正直この面子では瀬賀くんの存在感が薄れてしまうといえるんですが、そこはひなたさんが好き好き大好きSSDなので外堀を埋めて絶妙に立ち位置を得ているという印象です。それだけひなたさんの瀬賀くん大好きが重量があるんですよ。でも可愛いんだこれが。
 そう、ひなたさんは可愛いんですよ。ちっちゃくて、眼鏡っこで、おさげ。そういうぱっと見は地味に見えるんですが、案外野性味というか、妙なアグレッシブビーストっぷりがある子、なんか野生動物にやたら好かれるたり、とかなので、地味な印象をすぐに覆されます。瀬賀くん大好き過ぎて色々猛ったりするし、猫も好きだけど猫には避けられるけどだったら追いかける! でわりとアグレッシブだし、というので、やたら動きまわる系小動物の趣きがあります。それがまた可愛い。愛おしい。そんな子なのです。こんな子にアグレッシブに好きオーラ出されてスルー出来るのか? というのは、当然悪い気持ちではないどころか嬉しいっぽいというのが、瀬賀くんの折々の行動からみてとれます。でも、お互い明確に好きと言わない。このもどかしさとそれによる更なる愛おしさ。これがこの漫画の基本テーゼを更に強化しているのです。その部分がしっかりしているから、三人娘のボケあい具合も更に良いものに。そういう好循環が、この漫画にはあるのですよ。というか、コミックマスターJ顔で「いい漫画です」って言える漫画なので、もっと広まるがいいや!