感想 小野中彰大 『クミカのミカク』1巻


小野中彰大 クミカのミカク 1
(画像、文章共にのリンクがAmazonの物理書籍のページ)

 大体の内容「クミカさんの新・食生活」。元々は食指源が少なく、食事が空気中のプランクトンとか成分とかで済ます星の出身のクミカさん。しかし、ある日に風邪をひいてしまってばたんきゅーとなり、マスクで食事も出来ない! という状況に陥った時に食べた鍋焼きうどんによって、食の道に導かれていく。それが『クミカのミカク』なのです。
 この漫画でまず最初に驚いたのは、宇宙人設定が特に前置きもなく普通にいる、ということです。その辺に普通にいるのが当然の世界、というのが提示される訳ですよ。それでいて、味覚に関しては地球人も他の星の人も同じ、あるいは似ているというのが、面倒なんだよ、一々設定することは全て! と言っているように、最初は見えるんですけれど、先に導入として書きましたクミカさんの食への入り方、というのが非常に丁寧です。書いたようにマスクのせいで食事出来ない! の飢餓感から初めて口から食事をする、というのをしたり、そのことがきっかけでいきなり食に目覚めるというのはクミカさんの星での生活とかからすると大変贅沢、というのが提示されたりするのです。あえて、込み入った部分は見せすぎないように、しかし見せる場合は効果的に、というのを選択した結果の、異星人が馴染んでいる設定なんだな、と理解出来るのです。なので、他の星の人も地球人と同じ味覚を、という部分もいつか何かの形でそれだけじゃないというのがフォローされるのかもしれない、と勝手に期待を膨らませていたり。それくらいは出来る漫画だと思います。
 そう言う信頼を勝手に持ったのは、クミカさんが食に当たっていくのが大変じっくりと、そして重要な部分はしっかりと描いているからです。初めての食>腹が、減った>味について知る>苦いを克服>自分で作る! という流れはきっちりとして且つ素敵に自然でありました。特に、牧場に行く回は大変きっちりと、生を頂いているというのをクミカさんが分かっていたけど心で分かる、腑に落ちるという形に持って行っているのが大変良かったです。この階段を一段ずつ登るような内容が、この漫画の良さとして立ち上がっているのです。
 さておき。
 この漫画の主の線はクミカさんが食というものを知っていく、味わっていく事ですが、横線として同僚のチヒロさんとの恋バナもあります。チヒロさんは部署の皆(クミカさん除く)に完全に知られているくらい分かりやすいんですが、クミカさんは仕事に一生懸命なのでまだそれに気づいていなくて、でも、じわじわとチヒロさんへ気持ちが行っている、という描写がもうなんというか、恋心が分かんないのが徐々に分かっていく、気になっていくって素敵やな。そういう感想が出てきてしまいます。特にクミカさんが習いながらカツサンド作って、チヒロさんに食べさせたら何故かクミカさんが宙に浮いちゃう、という回は素晴らしかった。気持ちに気づいてない子って素敵やん? 最高やん? そんな語りかけをしたくなるんですよ。この辺が、食の話とどう絡んでいくのか。大変気になる所です。最近は食系漫画は多いけど、頭一つ、は大きいけど、半分程は抜けてるので、しばらく注視したいですね。