感想 阿部潤 『忘却のサチコ』5巻


阿部潤 忘却のサチコ(5)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「忘却のサチコ 旅情編Part2」。今回も4巻のように旅情編であります。福岡に行って食い、高知に行って食う。あちこちで食う! 旅情もありますが食うのがメイン。それもテクニカルに、今までやってない食べ歩きの形を。それが『忘却のサチコ』5巻なのです。
 旅情編ですが、仕事の部分も多いのがこの漫画らしさ。そこにどう食を絡めるか、というのが基本的な立ち回りなこの漫画であります。今回は福岡編が自由人姫村先生の対談仕事の中で、え、そのイカ食えないの!? というのでどう立ち回るかという話。そこをどうするか、というとなんとか対談を成立した後に忘れ物が! という古典的なテクニックで食ってました。その後姫村先生がどっかに行ってしまって全部食べられないと言うオチもありました。
 高知編が時間が限られた中で美酒乱先生の言ってた飯所を堪能してくる(一応仕事だけど、美酒乱先生が幸子さんと連れ立っていくために仕事として捏造)、というのをきっちりこなす流れでありました。時間内で終わらないぞ、と美酒乱先生が目算を立てただけあって、色々と辺鄙な所にあるその食事処を巡ります。必死だったけど、食事すれば全て忘れられる、というので大変な強行軍だけで堪能しておられました。それにしてもどんどん食道楽に育っていく幸子さんでありますな。
 さておき、幸子さんが最近は俊吾さんのことをあんまり思い出さなくなっている、というのは食の忘却力がどんどん蓄積しているからなんでしょうか。キャンプ編でもラブい話になりそうなところで、いつもの生真面目さはでていたけど、俊吾さんの顔がちらついて、というのでは無かったりしましたし。なんだか、最近はそこに折り合いが付けられているんでしょうか。それは大変大きな進歩である、と言ったら言い過ぎかもしれません。でも、幸子さんは生真面目なところに融通が付くというか食が絡むと融通がずるずるするようになってるよなあ、と思うのです。新人小林さんへの指導も都度都度してるし、それでストレスは溜まって飯で解決してますけれど、前は、飯が無かった頃は、ストレスをどう処理していたのかなあと思うと、食で解決するのは、幸子さんにとっては良い変化であるとは、言えないでしょうか。
 というのは置いておいて。
 今回の飯で腹にぐっときたのは、この巻最後の回でのチャーシューエッグ丼。ほろけるチャーシューと卵、ってだけでもう。腹が、減った。って井の頭五郎顔になります。がっつり系飯として大変心惹かれます。というか、今から何か食っていいですか!? というくらいメシテロ状態になっておりますよ。チャーシュー好きなんですよ。中々自家製チャーシューのとこが近くに無くて、いいチャーシューは買ってでも食いたいんですよ。そういう欲望が、このチャーシューエッグ丼で励起されて、もう、セブンイレブンの角煮でもいいわ! という面構えになってしまいます。それぐらい自分にドストライクな飯だったのですよ。
 とかなんとか。