感想 高遠るい 『はぐれアイドル地獄変外伝 プリンセス・セーラ』1巻


高遠るい はぐれアイドル地獄変外伝 プリンセス・セーラ(1)
(画像、文章共にAmazonの物理書籍のページ)

 大体の内容「その女、豪島セーラ」。『はぐれアイドル地獄変』でその存在感をむき出しにし過ぎて、出るだけで下品面白いという謎の賛美を一身に集めた豪島セーラ。その活躍を見るのが『はぐれアイドル地獄変 プリンセス・セーラ』なのです。
 いいか! まず豪島セーラについて説明しておくぞ!(ホワイトボード打)
 豪島セーラさんは、18歳でAVデビューを果たした後、瞬く間に様々なジャンルのAVを制覇。そして自らAV監督としてもその才を発揮する性の達人です。本家『はぐれアイドル地獄変』でもその飽くなきエロさで我々を魅了してくれました。しかし、その輝きはあまりに鈍色で、放っておくと作品自体がその色に飲み込まれるんじゃないか、というレベルにまで達しての、その御仁の単品スピンオフ。つまり隔離政策です。その判断、イエスだね! と言っていいでしょう。それほどまでに、セーラさんはキャラが強いのです。それも、下品な方向での、強さであります。
 そんな豪島セーラのキャラクター一点突破がどうなるか、というのがこの作品のカラーな訳です。それは大変下品であります。ひたすら様々なAVネタをしていくんですが、方向性が尖りまくってます。37㎝の息子を、とか、160キロ巨漢レズ、とか、イルカと獣姦(これはあまりの内容で欠番)とか、それどういう発想で!? というのが乱打されます。ですが、いい? ここからが重要よ? それらが若干漫画としてナイズドされているとはいえ、方向性としては既存のAVにもある、というのがまたとんでもないのです。一応、AV業界というのがとんでもないのはそこそこ知見はあった自分ですが、巨漢レズとかは流石に知らなんだですよ。エロの世界はエッジに向かい過ぎるクセがあるにしても、この漫画レベルまで到達しているのもあるのか、と思うと、事実は小説より奇なり、はけだし名言としかいいようがありません。そんな世界の入り口として、豪島セーラが立ち上がってくるのも、この漫画の鈍色な魅力です。普通に性活していたら必要ないような気もしますけれども。
 さておき。
 先に下品、と書きましたが、これは全くもってこの作品に対して正しい認識だと思います。ただひたすら下品な豪島セーラという存在が、この漫画を押し進めていきます。しかし、単純な意味で下品と言っていいとは思いません。この漫画の下品さ、というのは、いや、この場合の下品と言う言葉の意味合いは、下(シモ)の品格の略称、といえるレベルなのです。確かにセーラさんは無茶なエロ仕事をしています。基本的に色々下に結びつけてしまいがちです。初恋すら良く分からずエロく乗り越えたりする人です。でも、ただ下品な訳ではない。どこか一本筋通った、あるいはエロに対して真摯だからこそ出る品格。そういうものを、彼女は持っているのです。例えばセフレが元鞘に収まる話での、そのセフレのAV仕事での必要性、あるいはそこだからこそ輝く様を元鞘相手に教える辺りは、セーラさんだからこそ出来るものでした。だから、単に下品である、というのは少し性急で、だからこそ下の品格がある、というべきなんじゃないか。そういう戯言を言ってみたくもなるのです。
 さておき。
 最後にこのことについて触れない訳にはいきません。そう、巻数が“1”と付いている点についてです。7話の最後のコマで最終話、って書いてあったじゃないですかやだー! というのと、わりとAV女優にはクリティカルな要素があったのとで、これ続き出来る訳ないんじゃないか? と思ってたんですが、でも、そういうクリティカルな要素がある状態のセーラさんってどうなるのか、というのは気になるし、外国行脚の話とかでも間は持つかもしれない、とも思えるようになってきました。むしろちょっとそういう話でどう下品にしてくるか、と言うのも見たい。なので、じっくりとその機が熟すのを待つことにしたいと思います。