感想 三家本礼 『サタニスター完全版』1〜4巻


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 大体の内容「悪討つシスター、サタニスター!」。色々と諸事情に寄るらしく、最初は全然サタニスターじゃないじゃん! ってどっかのヒロインじみた気持ちになりますが、1巻中盤からきっちり悪魔寄りのシスター、サタニスターが登場して殺人鬼をぬっ殺す! していく漫画になるのが、『サタニスター』、それの完全版がこのほど発売された訳なのです。
 どういう話かと言うのは最初に書いているように紆余曲折があったんだなあ、と思える内容。最初二話が後にサタニスターの獲物として悪側のメインを張るヴァルキリーの話なんですよ。この二話でどんだけヴァルキリーがおかしくおポンチな殺人鬼なのかをきっちり描写しているものの、その相手たるサタニスターは影も形も現れません。この辺読み切りの話だったとかなんとかなんですが、それが逆にヒーロー待望論を持たせてくれる形になって、どうなるんだこの漫画。と気を揉ませてくれます。そんな中でのサタニスターの登場、そして活躍、そして継承。それがこの漫画の全てと言っていいでしょう。どう考えてもストーリーラインの整合性というよりは勢いを重視してる部分が多く、特にヴァルキリーの殺人鬼仲間の墓井田の扱いがいいんだか悪いんだか全く良く分からないんだけどとりあえず殺人鬼じゃないじゃん! だった時点でこの漫画の走り方が如何に突飛だったかが分かろう者です。なんでヴァルキリーの殺人鬼仲間だったんだ? というくらいにいい奴で、そもそも人殺しもしていない、ってだからなんで殺人鬼仲間になれるんだよそれで! な展開なんですよ。でも、なんかそれも納得できてしまう、読んでいる間は特に問題を感じない、そういう特別な力がこの漫画には宿っていると言えるでしょう。
 そのパワは、状況が五転くらいしてしまうのにきっちりと最後までなんか納得出来るという事態にも表れています。きっちり因縁を解決したのは驚き役の子くらいです。墓井田も因縁があったのに驚き役の子にそれを大体盗られてしまいます。というか驚き役の子は最後に“サタニスター”という大きい役を渡されるくらい優遇されており、正直この漫画で一番目立ったキャラだったかと思います。そこも、やはり納得させられるんだから、この漫画の力というのがどれだけか分かろうものです。他にも、こいつ名前付きだから強キャラなのかな? と思ったのがわりと他のキャラの立ち上がりの為の贄になる場面が多かったり、殺人鬼に乳飲み子を人質に取られて料理勝負になったり、その解決が三家本先生がかなり困ったんだろうなあというのをリアルに混乱するサタニスターの図で見せつけられてり、なんか魔界とか言い出したのにすぐに何事も無かったかのようにその話が後退したり、とドライブ感が強い漫画でありました。『血まみれスケバンチェーンソー』もドライブするところが結構ありますが、その一つ前がここまで凄いドライブしてたんだ、というのが分かって、大変良かったです。そういう漫画家さんだとは思っていたけど、その認識を遥かに超える業前! だったんだなあ。
 キャラクターの方は魅力的な殺人鬼という狂ったバズワードがでてくるくらいいい物でした。最強殺人鬼決定戦というのでネームドな殺人鬼がでてくる、のを更に食らっちゃう殺人鬼が、という倍々ゲームの様相で、積み上がった、と思ったら次の瞬間違う殺人鬼がでてきてジャガる、というのがテンプレート化して逆にそのまま出て来れた殺人シェフがレアケースだったりするから堪りません。いいわあ、このジャガり感。
 整合性の取れた話、というのが好きな人には勧めにくい。逆に勢いのある漫画が好きなら勧めやすい。そういうタイプの漫画でありました。個人的には後者の要素が強いので、大変楽しめましたよ。
 とかなんとか。