感想 クール教信者 『ふるまぷら』1巻


クール教信者 ふるまぷら(1)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「私はプラカードで意思疎通!」。プラカードの点数で会話というかコミュニケーションを取る変わった女の子、左院真さんと、高校で同級生となった光炎寺京さん。二人の仲睦まじいまじいいのを見ていく漫画。それが『ふるまぷら』なのです。
 クール教信者先生と聞いて何を思い浮かべるかは、実に多岐にわたってきたのが最近の市況であると思います。様々な手練手管で色々な漫画を描いているクール教信者先生。この多作の中で何がその神髄だろうか、というを考えてみるに、それはやさしさとやらしさだと思うのですよ。作品内で色々はある。大変なこともある。でもそれをきっちりと包括するものがある。それがやさしさとやらしさ。作中人物への時に厳しくもするけど最終的には柔らかく包むやさしさと、作中人物にあるエロス側面のいやにならない程度の発露、やらしさ。この両輪のバランスで、様々な趣向の漫画が織りなされているのですよ。その視点からすると、この『ふるまぷら』はやさしい部分をちゃんと明確に刻みつつ、そしてやらしい部分もしっかり見せつつの、オーソドックスタイプと言えるでしょう。
 特に、やさしさについては大変きちんと刻んできます。真さんが京さんと仲良くなる、から、仲良くなるのはいいんだけど点数が10連打でそれはあかん、というので一回それを突っぱねて、それからごめんして再度仲良くなる、というのをやってて堪りません。そもそも、真さんがプラカードの点数でコミュニケーションを取る、というのがかなり際どい所に行きそうなのを、京さんがそれを理解することできっちりと回していく様などは、この漫画のやさしさの源泉として例示出来る点でしょう。
 やらしいについては、京さんがイイカラダしているのもありますが、それよりもわがままボディな吾妻栞さんが所々でストーカーめいた登場をしてはそのエロさをにじみ出してくるんですよ。その所々のエロさが、そのままやらしいに繋がっているのです。この点の押し出しはかなり微妙なラインを突いていて、エロ漫画めいた方向ではないけど、でもエロい。そういう立ち振る舞いのラインではないかと思います。このエロ出力の加減は絶妙だぜ……。
 さておき。
 最後に好きな回の話をすると9話目の海回が素晴らしい。ここまでも積み重ねが上手く機能して美味しい漫画だったのですが、この回の味わい深さは更に一段上がっています。とはいえ、派手さのある回ではありません。海で自由研究の課題を、だけど遊ぶぜ! から、真さんはぐれた! の展開はベターというかオーソドックスなんですが、その後の解決がドラマチックではなく、普通に探して見つけた、というもの。その後のむつみあいもじっくり言葉を交わすだけのじんわりとしたもの。でもなんかとても青春している。それがなんだかとってもいい。この漫画の細かい機微を象徴する回だったかと思います。これもある種百合と言えるのだろうか。言えそうだなあ。
 とかなんとか。