感想 アビディ井上 荻原天睛 『さぼリーマン 飴谷甘太朗』


アビディ井上 さぼリーマン 飴谷甘太朗(2)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「ああ、甘味が往く」。色々な甘味をさぼって巡るサラリーマンの日常。その最終巻がこの『さぼリーマン 飴谷甘太朗』2巻なのです。
 正直申しまして、2巻終了は本当に惜しい。もっと甘味摂取時のネタが枯渇して一周して巡り巡って狂気の沙汰ほど面白い。になってくれても良かったのよ? という気持ちでいっぱいです。作り手の狂気待ちはワタクシ個人の駄目な性癖の一つでありますが、それをしたらなんだか突き抜ける気がする漫画だったので、そこまで到達しなかったのは、何度も言いますが、本当に惜しい。2巻にしてネタ切れ感あったから、素質はあるのだが。
 さておき。
 この巻は最終巻ですので、どうやって閉じたのかと言う話に持っていきましょう。それはもう強引な手管でした。飴谷さんのお父上が突如登場して、そして最高のスイーツとは、とか言い出して、どうなるの……。と思ったら飴谷さんのお母さんのことが最高のスイーツだ! って言いだして、更にお母さんの方は甘い物別に食べればいいのよ、子供じゃないでしょ? とか言い出して色んな意味で日向くんの強引なドリブル並みの強引さで突っ切ってくれました。正直何が起きたのか一瞬分からないくらいバタバタと解決していくから困ります。伏線として張っていたものが一気に引っ張ったせいでぶち切れた感じといいましょうか。とにかく、これで終わり! となっております。最後の最後のサプライズは特に今まで何も張ってない部分を因縁だけを頼りにへばりつかせた感じでありまして、でもそんな無茶も嫌いじゃないぜ? というくらいには度量を持ちたいと思います。
 さておき。
 2巻になっても飴谷さんの甘味行脚は留まる事を知りませんが、当然食べた後の世界もおかしいのも留まる事を知りません。この部分の白眉はその前段階でチャゲのコスプレしてパウンドケーキを買う回でしょうか。やーやーやーと歌いだす精神世界のノリは大変昂り過ぎて意味が分からなくなっていますが、元々この精神世界の訳のわからなさは際立っているので、ある意味いつも通りですが、でもチャゲに真似ているからやーやーやーと歌いだすというのは個人的にはなんか去来しました。ああ、バカなんだ。というのが。
 ということで、総評めいたことを書きますが、先にも書いたようにやっぱり勿体ないですよ。もうちょっと見たかったというのが正直な話で、最初から突き抜けていた飴谷さんの精神世界が、更にブースト掛っておかしくなっていく様をもうちょっと見たかったです。作品としてのトーンは最後まで一定して保たれており、単にサボるのでも色々なバリエーションを見せてきていたのも良かったと言える所です。どうやってサボろうというのはちょっと仕事する人としてどうなのか、と言う部分はありつつも、仕事はこなしてからサボる、というのが大変しっかりしている辺りはいいバランスでした。だからこそ、そこが崩れる、漫画の法則が乱れる! になったらどうなるのかなあ、と言うのも見たかったです。とりあえず最終回のバタバタ感よりもっとカタストロフな内容が、見たかった! とかなんとか。