感想 高尾じんぐ 『くーねるまるた』9巻


高尾じんぐ くーねるまるた(9)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「その歌声は夕闇へと消えて」。今回もマルタさんが精力的に且つ質素に生活していくお話オムニバスな『くーねるまるた』9巻なのです。しかし、そこにいつもとはちょっと毛色の違う雰囲気のが混ざっているのが、特徴として挙げられます。今回はそこを中心に話を進めていきたいと思います。
 その雰囲気の違いがある、という回第123話「秋の月」。ひょんなことから女子中学生吹奏楽部の練習風景に混じることになったマルタさん。数日ながら親交を深めていた、そんなある日、その吹奏楽部の子が一人、転校することになって……。というわりと筋としては良くある形ではあります。しかし、その送り出しとマルタさんへの最後の発表の場面が、それまでぺちゃぺちゃ喋っていたのが嘘のように静まり、口での演奏をしながら、その女子中学生達は涙を流している、という場面が描写されます。特に雄弁になにか寂しいとか悲しいとか言わない、その前の雑談でもそういうの一切なかったのが、そこで口演奏するというのが最後なんだ、というので、皆が涙を流す。それが夕闇と重なり合い、なんとも物悲しい雰囲気、切なさをみせてくれるのです。元々大会に出る為に練習していて、その大会に出れないというのもあるし、一緒に学校外で口で演奏することで練習をしっかりしていたというのもあるし、それ以前に仲がいいからの四人組だったのが、別れ別れになる。というのはしんみりとくるものがあります。それ以外は大体質素ながら楽しく、というのがこの漫画だっただけに、この悲しさというのは不意を突かれたと言えるものでした。そして、それ故にその吹奏楽部員達の別れへの悲しみが伝わってきて、こういうことも出来る漫画なんだなあ、と妙な感心を覚えました。そりゃあ、その前の回が台風ではしゃいで水着姿で外に出るマルタさんなんだから緩急! ってなりますよ。なので、この回は大変記憶に残って、今後も残り続けるんだろうなあ、と思うのでした。
 その話はここまでにして。
 この巻で最可愛いマルタさんは、握り飯を持って「おこめ」ってやってるコマで確定でしょう。ちょっとデフォルメ調なも相まって、カワイイヤッター級の可愛さでした。その後の握り飯にかぶりつく姿も更にマーべラス。なんだこの可愛い子は! 飯を! もっと飯を! って謎のブリーダー気分を味わえました。いつもは可愛い重点だけど、今回の巻はそこにしんみりが入ったおかげで、更にバリエーションが豊かになった、という印象です。ああ、やっぱこの漫画好きだわ。
 とかなんとか。