感想 阿部潤 『忘却のサチコ』6巻


阿部潤 忘却のサチコ(6)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「大・遭・遇!」。ということで、今回は結構大ネタがぶっ込まれたのが、『忘却のサチコ』6巻なのです。
 今回の大ネタは二つあります。まず一つ目。まだ比重が軽いほうから行きましょう。それは、以前に、具体的に言うと2巻後半に結婚式を挙げた親戚の、子供が生まれたと言うので見に行くと言う話。そこはこし系うどん王国讃岐。ということで今回も讃岐うどん食らいまくりんぐが展開されます。2巻段階では、結婚というだけで動揺に動揺していた幸子さん。今回は子供が生まれたくらいだから大丈夫。もう無闇にチーンとかしないし。とは言うものの、


駄目だこりゃ

 という体たらくなのであります。その後、以前のように讃岐うどんの店を転々としたり、赤ちゃん人形を買って荒療治したりしますが、それでも駄目でどうなるこの旅! というハラハラ感が満載なんですが、最終的には前回行って勇気をもらった金刀比羅宮、その奥の奥に行くことで、気持ちの整理が解決するのでした。上の画のような状態でずっと推移するので、本当に大丈夫なのか、赤ちゃんに会えるのか、本当に大丈夫なのか。と老婆心がびんびん物語でしたよ。最近はきっちりとした部分が多い幸子さんだっただけに今回の動揺加減は、そういえばそういうトラウマあったなあ、と思い出させてくれます。これが次の大ネタの地味な助走になっております。
 それはさておき、うどん、美味そうでした。讃岐の国のソウルフード、うどん。ソウルフード過ぎて朝昼晩からおやつまでうどんという好き者もいる彼の地のうどんバリエーションは本当に豊富だなあ、と二度目の讃岐回が4話続いてネタ切れ感が見えない辺りに感じられました。讃岐うどんというとコシですが、そうでない部分もまたいいのがある、というのが例示されたのは地味に面白い所だな、とか。店によってそう言う部分の違いがある、というのが本当にソウルフードらしいといいましょうか。
 と言う話はさておき、二つ目の大ネタの話に移りましょう。これは本当に大ネタです。この漫画の終了を告げる鐘とも言えるレベルの大ネタです。と書けば、勘の良い方は電球が点灯するかと思います。まあ、すぐぶっちゃけると、とうとう逢っちゃうんでうすよ、俊吾さんに。
 この遭遇は全くの偶然。美酒乱先生と一緒に盛岡に、という話だったのが、美酒乱先生が足を骨折してしまい、一人取材旅行と敢行したその宿で、働いていたのが俊吾さんなのです。名前もシュンジと偽っていたのと、かなり場末の湯治場で、な辺り、本気で隠れていたというのがうかがい知れますが、しかし二人は出会ってしまいました。この漫画の一つのけじめとも言える部分に、とうとう到達してしまったのです。というか、いつかは出会うだろう、とは思っていたけど、出会ってさてどうするんだ? 幸子さんが恨み事を言うタイプでもないしなあ。というので、この漫画の決着点として今回があるのか。再びくっつくのか、それともまた別れ別れになるのか。とにかく只事では終わらない状態です。続けようと思えば長々続けられそうだけど、きりが非常にいいタイミングでもある。さてどうなるのか。次の巻を震えて待ちたいと思います。