感想 津留崎優 『箱入りドロップス』5巻


津留崎優 箱入りドロップス 5巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容『「高校二先生が終わる」「終わるとどうなる?」「知らんのか」「高校三年生が始まる」』。ということで、雫さんたちも高校三年生。進路の影がひたひたと。と思ったらもうほぼ大丈夫な進路を見つけた人が過半数という事態で、進路問題はそれほどクローズアップされない感じなのが、『箱入りドロップス』5巻なのです。
 とはいえ、進路問題はそれなりにあります。陽一はまだ進路が安定してないというのが今後影響してきそうですがそれほど大きくは扱われません。大きいのは萌さん。いろいろあって相ノ木と一緒の大学に行きたい、というので大変な目に遭うことになります。相ノ木と同じ大学で大変? と思われる方もいられましょうが、相ノ木のやつが高二から成績をぐんと上げているというのですよ。いいんちょも愕然の上り方で、それなので萌さんの想い、そして大変でもやるという萌さんの頑張りは大変良いものなのです。というか、相ノ木は萌さんの扱いが上手くなってるよなあ。回避性能も高まってるから偶にしか被弾しなくなってるし。ビーストテイマーかよ。
 さておき。
 今回はイベント盛りだくさん。修学旅行にキャンプにと、色々と楽しんでおられます。どちらもしっかり尺使ってこの漫画らしいボケ具合とピュア具合と陽一のところどころ気持ち悪い具合が混ざっていい回となっておりますが、一番クリティカルなのは、やはり台風の日の話でしょうか。
 台風の日。それは雫さんには苦手な日。でしたが、陽一と一緒に台風を体で感じて、そこで、好きの意味を知るというのがもう。陽一と一緒なら、どんな日でも怖くない。楽しい。それが、好きってことなんだ。ってなるのがもうね。そうなるのが陽一だからだ、ってのをきっちりと知って、この関係どうなるのやら、という雰囲気です。陽一も好きってなってるけど、雫さんのそれよりはまだ浅い感じであるなあ、というのがどう関連してくるか。でも、手を触れただけでビビッドに反応しちゃう陽一だからなあ……。道が近いのか遠いのか。
 さておき。
 この漫画の良さはすなわち登場人物のいいところの良さなわけですが、特に男性登場人物の良さが際立つわけですよ。陽一は、どんどん人と絡むのが苦手ではなくなっていってた、というのも言及されますし、雫さんが好きでどんどん挙動不審になったりします。しかしやっぱり相ノ木の存在はでかいでしょうか。友人ポジ、それも友人内でくっつく、という微妙に加減の難しい立ち位置なのに、それを綺麗にこなしてむしろそれの位置がいい! その位置がベスト! ってやってるんだから本当に得難い存在です。先にも述していますが、萌さんを上手く扱っているのもそうですし、基本あけすけなのに萌さんの話になるとナイーブになるなど、いい意味でも悪い意味でも萌さんに影響を与えられているのが高額ポイントです。等身大というにはちょっとおバカなところのある面々の、でもちょっと細かい機微というのが、この漫画の良さだよなあ、と書いてこの項を閉じたいと思います。