感想 九井諒子 『ダンジョン飯』3巻


ダンジョン飯 3巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「水辺の相手。それでもやっぱりダンジョン飯」。2巻の段階で炎竜の方が上層階へと上がってきている、ということで、案外この漫画の先は短いのかな? と思っていたら、これが案外長くなる可能性も見え始めて、でも基本はモンスター食のああダンジョン飯ダンジョン飯。それが『ダンジョン飯』3巻なのです。

 ということで、『ダンジョン飯』3巻です。今回はまさかのマルシル離脱!? ということがあったりしましたが、基本はモンスターを食べるいつもの『ダンジョン飯』です。毎度何とかしてモンスターを食うという方向にもっていく手筋の多さが称賛に値するこの『ダンジョン飯』ですが、今回はそれを更にもう一段押し上げるネタがぶち込まれます。それは、マルシルとファリンが知り合うきっかけになった、<迷宮作り>の話。これが、この漫画の含意を更に深いものにしています。
 マルシルが学んだ<迷宮作り>というのは、容器レベルの極小さなダンジョンを作るものであります。その中にいろんな要素を入れて、一つのダンジョンを作り出して魔力を、というのなんですが、それがこの漫画の舞台のダンジョンにも当てはまるのではないか、というのが示唆されます。それは、2巻のゴーレムのいる生態系という話にもつながってきます。


でかっ!

 3巻の水辺の生態系が、この大きなクラーケンの存在で崩れている、という話が今回されています。この水辺の上位者のせいで、中位者が乱獲され、なので下位者が増えている。そういうバランスの崩れがあるというのです。2巻ではバランス調整者のゴーレムが減って、とセンシが嘆いていました。今回も同じように嘆いていましたが、しかし、ここで重要なのはそこにもう一段上の最上位者、つまり冒険者の存在があるのではないかという事です。これは結構面白い。つまり、偶にある生態系の狂いを、冒険者で均すそういうことを想定しているダンジョン、ということだからです。迷宮が、ダンジョンがすべからくマルシルの習った<迷宮作り>であるかはわかりません。しかしもしそれと同じものだとしたら、これは相当高度なダンジョン、いやもう大ビオトープと言ってしまっていい仕上がりです。某栗原先輩がふおおおおお! とか言ってリスペクトしだすレベルですよ。
 とはいえ、冒険者頼みの生態系ってどうなの? 冒険者が勝てなかったらどうなの? という疑念は当然湧きます。しかし、そこについても今回はちらっとある事実が、実は今までもありましたが、より具体的に提示されます。それが蘇生術。つまり冒険者は生き返る事が出来る、という点です。しかも、そうなり易いように作られたダンジョンである、という話も出てきます。つまり、冒険者が安定して強くなれる、繰り返しによって情報が蓄積できる素地があるダンジョンである、ということです。そして、そういうのが機能しやすいような、死体回収業とかが生まれることすら、もしかしたら想定内なのではないか、と感じさせてくれます。冒険者という存在が生まれるのを知った上での制作物。それがこの漫画のダンジョンなのか、と思うと、確かにマルシルのいうように頭おかしいとしか言いようがありません。どんだけ規模でかいのか。そして、それによって何を生み出したいのか。容器での迷宮でもちゃんと作れば大変なものが、ファリンの作ったようなのが出来ると考えると、これは何かとんでもない事態がこのダンジョンをめぐっておきているのではないか。そう思わされます。こりゃ、ドラゴン倒しただけで終われないかもしれんな。さて、どこまで行くか、この『ダンジョン飯』。


マルシル可愛い

 今回のマルシルは、魔力枯渇したり、その回復にウンディーネの水をがぶ飲みしたりとだいぶ受難でしたが、魔法使いとしてきっちり仕事してましたし、また飯のところでも徐々に忌避が少なくなっているのが、レバーばっかりよこすな! なとことか、分かったり、と大変良いものでございました。今後もマルシルには可愛いところをきっちり出していっていただきたい。そう思うことを記述して、この項を閉じたいと思います。