『貞子VS伽椰子』のネタバレ感想のようなもの

 この文章は『貞子VS伽椰子』のネタバレを多分に含んでいます。見たいけどまだ見てない、という方はカカッとバックステッポしてください。見た方は気にせずお進みください。特にストーリーの要約もしないので、本当に見た方向きの内容ですので、ご注意を。
 それではいってみましょう。

ネタバレ感想と訳の分からない気持ちと

 貞子と伽椰子がVSる。その言霊だけで三千世界が沸き立つ、まさしくホットワードな本作ですが、実際の所、VSる部分はそんなに多くないのが個人的には不満点でした。西洋のホラーVSであり、フレディとジェイソンがVSる『フレディVSジェイソン』のような、ちゃんとしたVS物とはちょっと趣が違うんですよ。これはその在り方の差というべきものがある、と勝手に思いました。それについてひとくさり。
 『フレディVSジェイソン』と『貞子VS伽椰子』を決定的に分けるのは、ホラー映画としての方向性の差でしょう。片や迫ってくる恐怖のフレディとジェイソン。片や片隅の薄暗がりな恐怖の貞子と伽椰子。もっと端的に言うと、追いかけっこするかしないか、という部分が洋の東西ですっぱりと分かれた格好であるな、ということです。その分、尺の使い方にも差が出ます。いきなりこちらやってきて追いかけっこして道すがらぶち殺せるフレディとジェイソンとは違い、こちらからアクセスする必要がある上に基本一回一殺な貞子と伽椰子ではキルレートはあまり上げられません。ダレ場でとりあえず死ね! することが出来るフレディとジェイソンはゆえにテンションが一定でした。そういうのが出来ない分、じわじわと押し迫る恐怖として存在するのが、貞子であり伽椰子である、ともいえるのですが、その分派手さに、赤色には欠ける展開が多かったように思われます。まあ、この辺の色合いについては意図的に赤色出さないようにしていた節もあるので、そう思うのは許容範囲内ではあるかと思いますが。
 さておき。
 先にフレディとジェイソンは追いかけっこ、と書きましたが、それが出来るのは当然、力があるからです。ジェイソンのガチでのサツガイ力とか、フレディのドリーミーなサツガイ力とか。だからこそフレディとジェイソンはタイマンでガチのVSることが出来るのです。対して貞子と伽椰子はどちらも直接殺があんまり見ないタイプ。仄めかされるタイプと言えます。それがガチでVSるの、どうするんだ? と思ったらお互いのフィールドに引っ張りこんだりこられたり、というのでこれも結局仄めかされる、というものでした。とはいえ、VSってるといえばしっかりVSしています。尺が短い&お互い連れ込む以外の手管がないのが災いしたな、とは思いますけれど。もうちょっと伽椰子の貞子の毛に縛られる姿という誰得映像見たかったですよ。
 ですが、通常とは違う方向性でVSしている、という見方は出来ると思います。それは、Jホラーの雰囲気力をどちらもしっかり出した、モブピープルサツガイの手管。呪いのビデオを見た人は二日後に確実に死に、呪いの家に入った人は出てこない。その部分をしっかりと描いたのは大変良く、Jホラー二本を一つの作品に、という部分では、それだけでもしっかりとしたジョブであったかと思います。貞子と伽椰子ではなくお互いの二作品がVSしていると言ったらいいでしょうか。俊夫の執拗な首狙いとか、自殺しようとしたら「何勝手に自殺しようとしてるんや、われえ!」って感じで出てくる貞子とか、ネタ一歩手前の部分もアクセントとして効いていました。
 しかし、これは『貞子VS伽椰子』なので、もう一段、二つのホラーを一つの話のオチへと向かう筋が流れ込んできます。それが、有名である「バケモンにはバケモンをぶつけるんだよ」であります。
 ぶつけてどうするんだ、というのは観る前から思っていたことでしたが、観ていた時もぶつけてどうするんだ、という疑念は消えず、でも事態は着々と進行していきます。一応ぶつけたら消滅する、と言われるんですが、そんな簡単にいくのか? と思ったらあのオチなわけですよ。バケモンにバケモンをぶつけたら超バケモンが生まれるという正道のそれとは真逆の、しかしだからこそのカタルシス! おめでとう! 貞子と伽椰子が合体して最強の呪いの誕生です! その為、この作品の登場人物はおそらく全員死亡! という完全な敗北エンドなんですが、でもむしろこの形以外あり得ないよな、という感情をもたらされる訳ですから訳が分かりません。
 と思っていたら、最後の最後で、呪いの動画(作中で登場人物がネットに放流)が新しくなって、貞子+伽椰子=さだかやが出てくる、という呪いの進化を見せてくれます。これもうこの世界の人は映像媒体全部捨てるという、フレディ対策に夢を見ない睡眠薬が導入されたという設定になってる『フレディVSジェイソン』みたいなことになるしかなさそうだ、と感じました。というか、この合体した様、観ている時はそれしかねえよな! という気持ちにさせられたんですが、冷静になって考えると色んな意味でいいのかそれは、という気持ちにも。版権的に大丈夫なのか。とか。後、今後貞子及び伽椰子はあのスタイル、貞子に伽椰子の関節感覚が植わったあれ、になるのか、それともこの映画きりの一発ネタなのか、というのが全く読めません。普通に考えると一発ネタなんですが、でもやったからにはケツ持ってもらいたい。貞子スキルで映像から出たら、その家が呪いの家になる、という最強の呪いらしい凶悪さを見せてほしい。そんな気持ちになったりしました。
 総評すると、ホラーとしてきっちり面白い、怖いをしながら、後半から趣が変わってきたか、と思ったらやっぱり怖いをされて、最後にバケモンにはバケモンをぶつけて超合体! という亜空の展開で度肝を抜いてくれて、ほんとうにありがとうございました。と言えるでしょうか。ぶっちゃけ予想外に面白かったです。最終日に観に行って本当に良かった。劇場で他の人の反応を感じながら観るの本当に楽しかったですよ。みんな、合体からの展開にぽかーんってなってたの本当に最高でした。まあ、自分もぽかーんでしたが!
 とかなんとか。