感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』8巻


MURCIÉLAGO -ムルシエラゴ- 8巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「始まる、桜剪会との戦い!」。ということで、この巻でようやっと桜剪会首魁緋垣と黒湖との直接対決という形にもっていて、で、次回たぁどういうことだ! ビリーっ!! というのが、『ムルシエラゴ』8巻なのです。
 とはいえ、見所がないということは全くないッ! と思っていただこうッ!! というレベルできっちりと、林檎ちゃんVSワイヤー使いと朽葉っちの狙撃戦が織り込まれており、その合間に黒湖とひな子ちゃんの寸劇とかがあったりするので、緩急はきっちりとついております。朽葉っちをボスと呼ぶ男のことが大体分かってきたり、うららさんが色々無茶過ぎるというかRPGをあの対処する人、ブラクラのチョウの旦那のビビったら負けだ並みのやり方する人、初めて見た。とか色々と小ネタが聞いておるのもいいです。というかあんな人間重戦車どうやって倒したんだ、黒湖。寝技か? ねっちょり寝技か?
 さておき。
 二つあるVSなとこは「ほう、特性が生きたな」という内容で、ぶっちゃけ語るより見てください! ってシャクティ声で言いたいくらい、見れば瞭然なのでここでは触れません。いいシーンなのに黒湖の所業のせいで素直にいいシーンと思えなかったり、スレンダーなのが効きすぎて、まあ遠いと間違うよね。というのもあったりしますが、それはおいておきます。書くことは別にあるんですよ。
 という書くこと。それは<屠桜>という言葉。緋垣がいた、元々<桜>駅とあったところに、何かで<屠桜>とされたそれ。これがかなりキーポイントになるように思われます。なにせ、<屠桜>はひな子ちゃんの名字です。しかも、色々と、おそらくこの漫画において一番謎めいた存在であるところの、ひな子ちゃんの、ちょっと普通では見られない、名字。それが<桜>駅にわざわざ一字足して、ですよ。それから、緋垣がひな子ちゃんの名前を聞こうとしたときの黒湖の態度。明らかに、<屠桜>を名乗らせまいとしていた、その動き。そして、極めつけはわざわざカラーページを中に収録するという、電書版だけのかもしれませんが、手間を掛けた、あるいはこれが初対面なのか、な、黒湖とひな子ちゃんの邂逅シーン。血だまりの中で笑顔をして、ブロック遊びをしているひな子ちゃんと、それをただ見る黒湖。という絵は、何を秘めているのか分からないからこそ不穏に感じられます。そのひな子ちゃんが<屠桜>と名乗るのと、緋垣が書いたであろう<屠桜>、ここに何か接点があるのか。それが、この漫画の一つの大きなポイントとして、がっつりと立ち上がった格好です。
 立ち上がった、というともう一つ立ち上がったネタがあります。それが<悟白亜>。緋垣の計画を成就させようと動いたと思われる人物であり、林檎ちゃんのパパン、仮面蒐集者とも連絡を取っていたとも思しき人物であり、多分<夢中遊行>関係、ゴールドマリーの育てた薔薇を買っていたのもそうではないかなと個人的憶測を生んでしまう人物で、そして仮面蒐集者が言っていた黒湖を見ている人物、なのかしら? という謎の存在の意味深な<名前>であります。ここが全部つながるのか、それとも違うのかはまだ分かりませんが、ここまで黒湖周りに影を見せていて、関係ないとはさすがに思えないですが、でも杞憂だといいんだがなあ。黒湖ずっと見てるなんて絶対やばいもん。並大抵の悪人じゃない、悪中の悪を見ているのが、白いなんて可能性低すぎますよ。裏返って白いけど裏返っている時点でアウト、までありますからね。本当にどういう存在なんだろうかなあ。
 さておき。
 緋垣の計画、というのはどういうものか全くわからないですが、どうにも死ぬつもり、それもなんらかの意味を持って、というのでろくでもないことにしかならないのだけはひしひしと感じる状況であります。桜を剪定する、というのが一体どういう意味なのか。そこも気になりますが、果たしてこの漫画どこに行ってしまうんでしょうか。
 とかなんとか。