感想 有馬 『はんどすたんど!』1巻


はんどすたんど! 1巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「えっ!? ほぼ初心者だけで体操部を!?」。できらぁ! というのが『はんどすたんど!』なのです。
 というとさっぱりなのでもうちょっとどういう漫画なのかお話ししますと、ある北海道の春の日、積もった雪を片づけていたら道に迷ってしまった新城ななみさん(以下ななみん)は雪の合間から足が出ているのを発見します。その元に行ってみてみると、逆立ちしている真白ゆかさん(以下ゆかちー)がそこにおわしました。ゆかさんは中学の頃体操部だったのですが、この学校にはそれなく、というのを知って、フラストレーションが溜っての行為でした。じゃあいっそのこと体操部作っちまえばいいんじゃね? というななみんの甘言にほいほいとのって、体操部の募集をかけたら来た乙宮いちごさん(以下いちごガール)と晴沢ひなたさん(以下ひなたん)と一緒に、やっていこうってということに。そんな4人の愉快な部活話。それが『はんどすたんど!』なのです。
 さておき。
 先に初心者だけで? と書いたように、ゆかち−以外は体操経験全くありません。運動部経験はななみんは中学では陸上していた、というくらいなので、他は推して知るべし。そんな中練習して大会に、というのがいつか来るのかと思ったら、わりとすぐ高体連の競技会が、というので、「えっ!? まだほぼほぼ素人なのに大会に!?」となってという怒涛具合を見せてくれます。いちごガールの運動音痴具合はあれだけど、一応経験者がいるからできらぁ! と思われるでしょうが、経験者ゆかちーは緊張しいで、実際の実力はあるのに大会になると途端にへっぽこになってしまう、というスキルをお持ちでありました。ということで大会に当たって砕ける形になります。この辺の、実際にその通りのタイムスケジュールだし、一応実績作らないと部として体裁が、というのを後ろにしつつ、状況をどんどんと押していくスタイル、嫌いじゃないぜ。なのです。
 という冗談はさておき。
 この漫画の良さ、というのはそういう状況をパッ、パパッと変えて目先をきっちり変えるところにある、というのが持論です。これは展開の流れは勿論、4コマ漫画としての展開の流れにも言えることです。素早いんだぜ、俺は! というネタの出し入れの小気味よさ。これがこの漫画の味わいなのです。下手すると入れ込み過ぎて訳が分からなくなる、特に4コマ漫画なので枠の限界があり、出来ることの限度が他の漫画形態よりあるのですが、そのギリギリをきっちり見切って、情報量を統御しているんですよ。


限界ギリギリの騒がしさ

 このように濃度が非常に密なコマが多い、んですが偶にちゃんと凪のようなコマで間を取っていて、その辺きっちりと分かってしているテクさであります。ただぶち込んでいる訳ではなく、どう処理したら効果的か、というのをやっている訳ですよ。メインの混雑さで叩きつけつつ、偶にちゃんと間をおいてその後に繋げる。そういうのが出来ているんですね。誠に勝手ながら、4コマ漫画の教科書があれば、これはちゃんと載せるべきである、とすら言えます。


静、からのざわざわ

 このように畳みかける騒がしさの中に、偶にこういう静寂があるからこそ、騒がしさがより際立つ。手練れの仕事と言っていいでしょう。
 さておき。
 キャラ話しましょう。メイン四人はどの向きもへっぽこな面々ですが、それゆえに非常に重層的に関係性が成り立っているのが面白いところです。基本表情が変わらないけど大ボケ小ボケののななみん。それに対しての基本の突っ込みはいちごガールですが、いちごガールは体操面ではへっぽこなのでその部分を逆にななみんが突く、という入れ子の構造をしています。それは緊張で試合で力が出せないゆかちーにも当てはまりますが、そうでないところでも偶に変な事やることがあるゆかちーのカウンターとしてななみんが存在しています。ひなたんはあまり周りに突っ込んだりボケたりはしませんが、酷いネガティブ思考なのでそれが偶に発露して周りからすると謎行動をしてしまって周りが「?」となります。この関係性の多彩さが、この漫画の騒がしさの要因となっています。この4人だけで十分に漫画が回っていく、という高駆動機関なわけですよ。これが面白くない訳がない。今のMAX誌でも三本の指に入る作品であると思います。という大げさな発言をして、この項を閉じたいとおみます。