感想 高遠るい 『はぐれアイドル地獄変』3巻


高遠るい はぐれアイドル地獄変 3
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「『東京女獣拳』編! 他一本」。相変わらず芸能界で際物として生きる南風原海空さん。そんな彼女に映画の話が舞い込んできます。最初の映像作品仕事、ぶっちゃけAVですが、の監督であるビクター伊庭からの依頼、というので絶対にノウ! な態度を最初に見せる海空さんですが、それがAVではないッ! かなりガチに作る映画、その名も『東京女獣拳』だッッッ! となり、引き受ける形になっていくのが、3巻の主な内容です。
 さておき。
 そっちの方については、色々面白エピソード多すぎて、特に温泉全裸組手がネタ的にもガチ的にも面白すぎるんですが、そこら辺を一々ピックアップしていくと時間が足りないので、ここは迷いながらも、どうせ色んなとこできっちり語られているだろうから、という理由でそっちは全カットして、他一本の方の、フードファイターVSボディービルダーのフードファイトバトルの方を詳しく話していきたいと思います。『東京女獣拳』編も一々すっとこどっこいですが、こっちも2話しか使っていないのに色んな意味で濃厚過ぎるネタっぷりです。
 フードファイトバトル編は、日本KGBの一人、翼田べる子(フードファイト世界一位)に、ボディービルダーマッスル山北(ボディビル世界三位)が挑む話です。マッスル山北がどう見ても某に君なのはいつも通りなのでさておき、この話の説得力の作り方が大変面白いんですよ。
 特に第20話「硝子ドール」のべる子と山北の台詞をカット割りめいてつなげて、一つの話の流れを作っていく形が、お互いの主張が絡まりあって変な構成なのに説得性をもって話を我々に叩き込んできます。あまりの説得性で3万キロカロリーが可能なことなんだ、と勘違いしてしまうくらいです。一回読んだ後だといや無理だろ! と思えるんですけれども、初見ではそこに疑いを持つ暇が与えられないというか、怒涛なんですよ。
 その怒涛の説得性は、べる子の大食い性能についての理屈にも当然影響します。拒食、過食、嘔吐の流れで胃は膨らみ、腸は吸収能力を失い、ってどう考えてもそれ死ぬんじゃないかな? と冷静に思い返せば思えるんですが、やはりそこへの納得を怒涛の力で押し切るスキルですっかりそーなのかー、って脳みそのレベルが落ちてしまって感じ入らされます。この辺は板垣イズムの持つ謎の説得性と同根です。
 さておき。
 そういう説得性を誇るフードファイト編ですが、第21話「天使の絵の具」では流石にそれはない、という突っ込みが入る段階まで飛翔します。その最もたるのが、マッスル山北の残像腕立て伏せでしょう。秒間4回の腕立て伏せッッッ! 見えるはずがない! ってんなわけねーだろ! って突っ込みが脳がゆるゆるな状態でも入れられますが、とはいえ実際残像しているので、えーと、そういう世界なんだ。という納得になってしまう辺り、この漫画の基礎も強くなったものだと感じますよ。
 しかし、そのジョーカーを最初に切った方が負けるのがこういうもののお約束。べる子の秘策というか、まあちょめちょめの感覚を、口から胃から尻への無限の広さを、という謎スキルをもって、べる子の勝利となります。
 まあ、それはいいんです。
 でもこの話の題の意味はそもそもどういう意味なんだ? フードファイト関係ないだろ? と思われた方もいらっしゃるかもしれないので、何が絵の具なのか、というのを書きたいんですが、あまりにアレなので婉曲的に言うと、あれです、大きい方です。べる子のちょめちょめの相手が、それをご褒美として受け取るタイプなのです。叔父をして「我が甥ながら筋金入りのイカレポンチよ・・・」と言わせるくらいにダメな相手です。そのオチのせいでなんか妙な話が、一気に頭おかしく終わるという、ある意味この漫画の狂気めいたところを象徴している終わり方だったと思います。この漫画どこに行くの……。
 とかなんとか。