感想 鈴木小波 『ホクサイと飯さえあれば』3巻


鈴木小波 ホクサイと飯さえあれば(3)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「今日も今日とて飯さえあれば」。人生に迷うブンさんですが、漫画家さんのアシスタントに行く、つまり漫画家志望となりました。でも、まだまだ迷いは深く。そんな中、詢子さんの馴染みである柑田川さんが、ブンさんを以前あった牛すじの君だと気づいて……!? というのが『ホクサイと飯さえあれば』3巻の大体の内容になります。といいつつ、柑田川さんがブンさんのことに気づいたところでこの巻は終わっているんですけどね!
 そういうはぐらかしはさておき、今回は夏から秋にかけてのお話ですが、というのに夏ど真ん中で天丼を作る回とかも。いいお椀を見つけたので、盛りたい、という欲望からですが、それにしたって形から入るタイプ過ぎます。その辺は一貫していて、漫画家のよくある姿、ステロタイプに手を出してベレー帽とか被ったりするんですが、それはまあさておき。
 この天丼回は地味にお初なことがあります。というのはブンさんの自己申告ですが、揚げ物やるの初めてなんですよね。ブンさんの人生初揚げ物。なので大変力を入れて対油対策していたりします。見た目は革命闘士以外の何物にも見えない駄目さ加減でしたが、本人はいたって本気なのでたちが悪い。そりゃ凪もあれだ、暑いからだ。ってなるわ。
 そういうボケた話でも飯は美味そうで飯テロ案件ですが、それはさておき、ブンさんの今後の処遇についての話をしましょう。とは言ったところで、それはある程度の方向性は我々は知っています。端的に言うと『ホクサイと飯』で漫画家として一応生活しているので、漫画家になる、までは確定的に明らかなのです。それなら道筋も楽じゃねえの? ということをお思いになられますでしょうが、そうは問屋がど三一。青春期によくある紆余曲折がしっかりとそこに存在します。この行ったり来たり戻ったりをする為に、『ホクサイと飯』は終わらなければならなかったのだ。という間違った理解すらぶっぱされます。*1
 なもんで、漫画家さんとこに行かせてもらって、色々するけど最終的に飯に辿り着いてしまうんですよ。他に出来る事が無い状態であったというのもありますが、元々飯なら誰にも負けない程熱意があるブンさん。むしろそれが、料理が天職なのでは? と思わずにはいられません。でも、漫画描いてみたい、というのは飯に対する熱意よりまだ低いけど、それでも高い方なので、これからどう漫画家への道筋を見つけていくのか。楽しみにしたいと思います。
 それにしても、漫画家さんはいいこというなあ。才能なんかない、やってりゃつく!(意訳)は、けだし名言であります。基本的に、やらなきゃつかないですもんねえ、どういうものでも。そういう意味では、まだ漫画家に対する気持ちがゆるいブンさんには響く言葉だったんだろうなあ、とも。これは鈴木小波先生自体が受けた言葉なのかしらね、とか邪推もでますが、でも、やるしかないという気持ちになります。DO IT! ですね、分かります。と書いてこの項を閉じたいと思います。DO IT!

*1:どうでもいですが、来月に『ホクサイと飯』の新装版、つまり全部入りが出るので皆こぞって買うといいです。とりあえず俺は買うよ。