感想 マクレーン 『怒りのロードショー』


怒りのロードショー<怒りのロードショー>

大体の内容「映画バカとは恐ろしいのー!」。映画バカの映画バカによる映画バカ漫画。それが『怒りのロードショー』なのです!
映画バカと言っても彼らの情念は某木根さんのように変な曲がり方はしていません。言ってしまえば直情です。まっすぐで、ひたむきです。しかし、バカ。お前のシュワ熱は低すぎる全然足りねえ! とか、走るゾンビより歩くゾンビだよ、とか、『E.T.』見てないとかどうなのよ!? とか、とにかくバカまっすぐです。特にシェリフ(本名なのかあだ名なのかいまいち不明。妹のトトさんにもシェリフお兄ちゃんって言われてるし)の爆発する映画に対する情念はガチで、爆発する映画は全ていいといっている感すらあります。そんなバカ達のグダグダとした映画話。それもまた『怒りのロードショー』だね!
さておき。
個人的にこの漫画の見どころは三点に絞られると思います。一点は先に書いたように映画を見た見てないでグダグダしているところ。そこの本当にどうでもいい話が、大変な見所でありますが、本当にどうでもいい話なのです。だが、それがいい。このどうでもいい話を見せる様は大変良いのですよ。よくこんな話で盛り上がったなあ、という追憶もあったりします。その部分の思い出させてくれる感じが好きです。
二点目は、女の子、というかシェリフの妹トトさんが大変可愛いことです。トトさんは兄がシェリフなので映画の薫陶をしっかり受けていて、どうやら個人的なコレクションもあるという、小学生(そう、小学生!)にしては映画が好きすぎる子です。『ホームアローン』はいいなあ、とか言い出すし、セガール沈黙シリーズのケイシー・ライバック物、というだけで戦慄するというっ鍛わり過ぎた感もありますが、そんなわりには素直でいい子であり、いい映画バカの妹はいい映画バカになるのか、という感嘆も持ったりします。個人的には兄シェリフが見てない『E.T.』を持ってきて見せてあげるという場面がなんだか得たいが知れないくらい好きです。強引な小学生らしさと、何故か『E.T.』の完全版とかのことを知っているという得体のしれなさが同居するとこでもあります。それでも、ああ、トトさん、可愛い。
三点目は、シェリフの映画友達でにわか気質なまさみが、シェリフ達映画好きと一緒にいる理由が大変いいことです。
この漫画には結構えぐみがあります。表紙でジム・キャリーサイコパス役をしていた映画『ケーブルガイ』のメインビジュアルのパロというかモロをしている村山という高尚映画好きもその一つですが、ここではもう一端であるまさみの姉の話をします。
まさみの姉は映画好きのシェリフ達との付き合いをやめろ、とまさみに言います。しかし、まさみは全く耳を貸しません。ここの再三再四にわたる映画オタクdisに、しかしまさみには暖簾に腕押し。溜息程度しかでません。なんでここまでスルー出来るのか。というのが謎のまま話は進み、その理由が、明言ではないですが、明らかにされます。
何故、まさみは姉に口汚くののしられても、映画好き達との付き合いをやめないのか。それは映画好き達が心地よいからなのですよ。まさみ姉も、その後にちらっと出てくるアニメ好きも、映画好きの面々をdisります。ひどく言います。しかし、映画好きの面々は他の相手を悪く言うことは基本ありません。相手が無礼だったりしたら当然論陣を張ったり、鉄拳制裁もあったりしますが、仲間内であいつはあいつはと陰口めいたことを、というのはありません。相手をdisらないのです。仲間内で喧嘩すること、とくにまさみはそのにわか気質のせいで見れ! って怒られるのが常態化していますが、それでも見れ! でしかなく見てないのはバカ、ではないのです。その空気の心地よさこそが、まさみが映画好きの輪にいる理由なのです。この辺りは本当にああ、いい仲間だなあ、と思わされます。あるいは、いい青春とでもいいましょうか。
とかなんとか。