ネタバレ感想 ノッツ 『初情事まであと1時間』2巻


初情事まであと1時間 2 (コミックフラッパー)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「今回も多彩! 多くの彩り! ワーオ!」。ということで、エロいことする1時間前にスポットを当てるという強すぎてクローン丈が相手にならないドレッドノート級の発想のラブアンソロジー、第2巻なのです。
この漫画、エロいことをするその1時間前からスタートして、エロいことには到達目の前で終わる、という発想出来ただけで強者な内容ですが、その強者プレイを、しかし弛まずやっているのがとても偉大なことです。発想は良くても、その強者プレイに驕り、ネタのブレが少なくなれば面白みも少なくなり、早々に飽きられます。しかしこの漫画は、そしてノッツ先生は違います。如何に多彩にしてやろうか! と蝋人形にしてやろうか! 並の発想パワーで、今回の巻も乗り切ってしまわれました。既に20回以上しているのに全く被ることのない、まさに多彩とはこのことであると言えましょう。
この漫画のことについてもうちょっと語りますと、エロさというのがしっかりあるのがいいのです。このエロさもまた多彩で、単純明快なエロさから、秘してこそ花のエロさまで、前段階であるのにきっちりとにじみ出ています。裸が長く出てくることもあれば、着衣からこのあとすぐ! な感じまでのもあります。でも、どこか上品さがあるのが更に良いです。どちらも初めて、という縛りからか、経験があるゆえの淫靡なのはないのですが、でも十分にエロい感じ、もうちょっとでやるんだな、というのを理解させる雰囲気がしっかりあります。でも下品な感じではない。ギリギリエロい感じ。あと一時間前だからこそ出せる、ギリギリエロく、下品ではない、なのです。
ただ、この多彩さ、そしてエロの蓋然性というのがある意味では、この漫画のフォロワーが生まれる可能性を踏みつぶしています。つまり、この気高き塔はノッツ先生しか登れない領域なのです。あるいはフォロワーが生まれれば、ジャンルとして成り立つような気もするところです。というか、ノッツ先生って大体他の人が登れない塔と建立している場合が多い気がしますが、それはさておき、それゆえにノッツ先生がどこまで登るのか、というのが楽しみな漫画でもあるのです。そういう視点もある、と思っていただければ幸いです。
さておき。
2巻で印象的な回は『ハロルドとアガサの場合』と『原始人のふたりの場合』。次点で『ネルラとソロンの場合』です。順に語っていきましょう。
『ハロルドとアガサの場合』は、主と使用人という関係性で、その関係性では結婚は出来ないという時代のお話。勿論、初情事に至る流れな訳ですが、二人の想いと現実のままならなさが、しかし新天地で二人で一緒なら、となるのが美しい話であります。お互いを想うからこその苦しみを乗り越える決意が特に美しい話として初情事に向かっていきます。
『原始人のふたりの場合』は、言葉がガウガウな原始人のふたりがエッチに向かう、という変化球です。これがその前の『ハロルドとアガサの場合』からするとかなり直截で、でもだからこそ初々しいんだけどガウガウ、というドレッドノート級の落差をぶちかましてこられており、単行本であるからこそのアップダウンだな、と目が点になるレベルでした。でも、エロいことを直截であるからこそ初々しくやっていくのもまた良かったです。この二つが、並びとして連続したがゆえに印象に残っています。
次点の『ネルラとソロンの場合』は、ダークエルフなネルラさんが赤子の頃に拾って名付けたソロンにメロメロというのが印象的です。拾った時は役立たなければ、とか言っていたのに大きくなったらメロメロという、ツンデレの素晴らしさは落差の素晴らしさッ! と塩屋翼声で言いたくなるレベルの落差でした。それだけで、もう満足です。素晴らしい。
ということで、まだまだ彩りが出来るのが発覚したのが、この2巻だったかと思います。どこまでネタ切れと戦えるのか、という下種い視点を、まだまだやれるのだが? で越えてくるノッツ先生に、今後も期待したいと思います。