殆ど死んでいる 『異世界おじさん』1巻

異世界おじさん 1 (MFC)

異世界おじさん 1 (MFC)

 

  大体の内容。「おじさんは異世界帰り」。17年前、2000年頃に事故によって昏睡状態だったおじさんが突如目を覚ました。その面会にいったたかふみは、いかれたように見えたおじさんの意外な事実を知る。それは、おじさんが異世界に行っていた、ということ! ということで、異世界に行ったではなく、行って帰ってきた、という異世界転生系のカニッシーの間隙を見事に突いた漫画。それが『異世界おじさん』なのです。

 先に言及しないといけないので言いますが、この表紙の人はおじさんではありません! よくよく綺麗になって転生とか、女の子になってとかありますが、これはそういう話では断じてない! そこを断っておく必要があるかと思います。実際、俺はそう思ってた。

 では、おじさんは? となるかと思いますが、ちゃんと表紙を見てください。それらしい小汚い眼鏡の男(言い方が辛辣!)が右下いるでしょう? 彼がおじさんです。間違えないように。

 更にでは、このエルフっぺれえ人は? となりますが、それは何の因果なのかおじさんに惚れてしまったお方らしいです。この漫画のこの巻にはちょい役でしか出てきませんが、この表紙やその内容をみるにつけ、かなりのツンデレ感でおじさんを付け回してた模様です。しかし、おじさんが異世界に行ったのは2000年頃。02年辺りから隆盛となったことによってオタに組み込まれた、ツンデレ受容体は持っていないおじさんには、単なる辛辣エルフにしか見えなかった模様です。でも、エヴァとかでアスカで得ているような気もするんですが、どうなんだろう。たぶんエヴァの頃は中学生か。いやむしろ受容体出来てるんじゃないですか!? そのくらいの年のこというのは!

 という話はさておき、おじさんの異世界生活は、それはもう記憶消去したいくらい大変だった模様です。そっちの世界の人は皆美麗なので、しょぼくれフェイスのおじさんはオークに間違われていきなり命を狙われたとか、魔法の才能はこの手のでお馴染みなくらいのチートなものがあった、実際に戻ってきても扱えるので大変素養があった模様ですが、それでちょっと現代技術無双しようとしたら異端審問されて命からがらだったり、ツンデレツンデレってわかってないから辛辣にしか見えないしで、そりゃ記憶消したいとか思うわ。というレベル。たかふみさんが見せてもらった手帳の内容がとびきりエッジが効いてたらしいのも合わせて、それが地道に開陳されるたびによく生きてたなあ。ってなってしまいます。異世界に転生するのも楽じゃないのですね。

 その異世界生活、本当に色々ありますが、結構そっちの世界にでかい影響を与えている節もあります。凍神剣の守り手メイベルさんの話が特にそれで、色々とメイベルさんの心を溶かしていくイベントをこなして手に入れる、この武器でないと倒せない相手が、というのに強引に倒してしまうというフラグクラッシャーしてしまいます。

 その世界でのでかいミッションのようなのに、いいのかそんなことで、と思っていたら、そのメイベルさんがおじさんのところにやってきて、今後どうすれば。というある意味当然の悩みを打ち明けてきます。それに対するおじさんの回答は、こもってていいんだ。でした。そして、メイベルさんはでかい承認を得て、引きこもりになった模様です。いいのかそんなことで。そう再び口にするくらいのダークサイドからの語りかけ具合でした。でもまあ、相手のしたいことなんて知ったこっちゃねえよなあ。とも思ったので、ある意味では爽快感すらありましたが。メイベルさんの暗い笑み最高でしたし。

 さておき。

 かように大変な異世界生活でしたが、戻ってきたら戻ってきたで生活があります。17年も昏睡状態で更にその時に異世界にいたとか、ハード過ぎてむしろ履歴書に書きたいのでは? という人生でしたが、これからはどう生きよう、となった時に、その魔法の才が活かされる展開に。魔法を使える! というなら何をする?

 そう、Youtuber!

 ということで特異な才を存分に生かして、おじさん、ユーチューバーで食っていくんだ。となるのが何とも現代的です。他にも魔法を多彩に使いこなして、でもユーチューバー。良いのか悪いのかよく分からない生き様ではあります。

 そんなおじさんが、異世界での生活を語りつつ、ユーチューバーで食っていく。ちょっとタガを外すと犯罪に活用出来そうで怖いんですが、それでも突き進むのが『異世界おじさん』なのです。