赤坂アカ:茶菓山しん太 『かぐや様は告らせたい 同人版』1巻

かぐや様は告らせたい 1: 同人版 (ヤングジャンプコミックス)
かぐや様は告らせたい 1: 同人版 (ヤングジャンプコミックス)

 大体の内容「原作がエロしないなら!」。青年誌連載ながらエロ要素一切なし!(一回、藤原書記がシコシコとかやってた気がするけど)! な原作『かぐや様は告らせたい -天才たちの恋愛頭脳戦-』のスピンアウト登場! 原作がエロしないんだから、こっちがエロするんだよ! という趣きで実際にかぐや様エロ同人を描いていた茶菓山しん太先生に、エロネタで! でも18禁はなしよ? で連載を持ちかける集英社は正気なのか不明ですが、そう、エロネタも見たかった! という読者な自分がそこにいるので、その点に関しては不問に伏したいと思います。そんな漫画が『かぐや様は告らせたい 同人版』なのです。
 そもそも『かぐや様は告らせたい』が分かってない人がこの文章を読んでいるとは思わないので、そっちについて言及する所作は全く見せないで、このスピンアウトについて話していきます。いいですね?
 この漫画はエロネタ、もっと有体に言えば性的なネタをがっつりといれている点が、原作とは全く違います。というより、原作がやらないネタ、だからこそだろうがっ! とコミックマスターJ顔でエロネタをぶっこむ事を目的として製作される、という製作意図としてはかなり特異な漫画となっております。それがにじませるのは、原作がエロネタを禁忌に近い形で封じているけど、そういうのも見たい読者はいるだろう。という製作側の思惑であり、それがあると分かっていても禁忌としているという原作のある種狂気であります。
 見たい、という者に対して、実際にエロ同人を描いていた人材にエロネタ解禁したスピンアウトを描かせる形で提供する。これはトテモ・オオキイ・インシデントです。実際、エロネタが見たいから描くという立場の者、実際に同人誌出した者にこのスピンアウトを任せているというのが如何にオオキイか。1巻あとがき漫画で集英社からのメールに、訴えられる! という笑い部分がありますが、実際の所これが笑いに転換出来ない可能性もあったのですから。
 でも、そうはならなかった。
 そうはならなかったんだよ、ロック。
 だからこの話はここでおしまいなんだ。
 と、どこかの眼鏡台詞を吐いてしまうくらい、でもこれはいい方向にそうはならなかった案件です。昨今はパロディ、オマージュ、二次創作、つまりパクリ活動ですが、それらから引っ張ってこられてスピンアウト描くというのがそこそこあります。でも、この漫画はその中でも特段に特殊な、原作の、青年誌でありながらそこに立ち向かわない、という狂気の立ち向かい方をした方向に、茶菓山ファンネル飛ばす感じでフォローを入れる漫画として、立ち上がっています。『かぐや様』という作品のすそ野を、己から同人版という形で広げようとする、でかいシノギの匂いがするな! と、そこ見つけて掘り下げる、この集英社の本気具合。そこに恐怖すら覚えるのは私だけでしょうか。
 さておき。
 前置きが長くなりましたが、この漫画の話に移りましょう。
 スピンアウトゆえ、作者さんが違う訳であり、つまり所謂公式が解釈違いの可能性があるのですが、そこに対しては今までエロネタしてないから、そう言う局面になったらどうなるか、と言うのが出ていないのが地味にトテモ・オオキイです。三話目の催眠アプリ(三話目からネタがバカになっているのが分かりますね?)からの、素直になったかぐやさんと御行の、え、本番行くのか?! となってからの、そうはならなかったんだという決着具合が如実です。素直ゆえに、あれ本番って!? という人物解釈が、しかし今までそういうのが出てないので、ギルティ! と出来ないという見事な手管です。そう言う意味では、このネタで、エロしない作品のエロをする、という方向に行くことを発案出来た人は、控えめに言って天才だと思います。
 散々エロネタ漫画、と書いてきましたが、そのエロ具合は18禁はダメよ? と編集さんに笑顔で禁じられているだろうことが分かるくらいの、ソフトエロ路線です。一話目で藤原書記のOパン2が丸見えというネタから、その後の話も色々展開しますが、ダイレクトなエロはないです。本番手前とか裸はありますが、実際に目に見える所にはガチエロは無いです。でも、そういうのが、ちょっとしたエロがあるだけでこう、ドキッとしちゃう。というのがこの漫画の良さであります。原作がそういうそぶりがないから、なんでもないようなエロが、幸せだったと思うのです。逆に言うとそこすらない原作の徹底ぶりにも驚愕ですが。
 個人的に好きな回は大天使のブラ回。かぐやさんの石具合が、原作以上に強調された瞬間に立ち会えて良かったです。いやでも、あれだ、余分な脂肪のないってことで……。ストーン、ってなるのは、その、そういうことですよ……。
 と、謎のフォローを入れつつ、この項を閉じたいと思います。