関口太郎 『ゆるさば。』2巻

ゆるさば。(2) (ヤンマガKCスペシャル)

ゆるさば。(2) (ヤングマガジンコミックス)

  大体の内容「この感じ・・・、掴めてきたぜ・・・」。ということで、人間が存在しない世界で、たった4人がそれを満喫するサバイバル? さばいばる! な漫画。それが『ゆるさば。』なのです。

 異世界なのか時間軸が狂ったのか。とにかく人のいないというおかしな状況に陥ったモモさんたち一家4人、だいぶ今の状態に順応してまいりました。一番拒否反応してたモモさんも、世界を自分勝手に出来るという事態を前に心のリミッターが解除されたようで、釣り、やる! とかカブ、乗る! とかやっております。なもんで、漫画の陽気もかなり上向きです。自分たち以外いない! というのを感じることもない模様。そりゃあ、誰も人がいない世界なら、したいことやったもん勝ちである訳で、それが分かってくれば、当然羽目は外されるものでしょう。それがこの作品のテーゼ、ではないにしても、思考実験の一つとしてみると、成程あり得ないでもない、という気持ちになります。いきなり人がいなくなるということが現実にあるかというかは置いておいて!

 しかし、実際の所この漫画の状態、というのは羨ましいと見るか、嫌だと見るか。この二つのどちらを取るかで、この漫画の楽しさは違ってくるかと思います。と言っても、単に否定的になるのではなく、羨ましくてその世界への妄想を羽ばたかせるか、嫌だからこそそこにいないことを確認出来ていい、というレイヤー分けも可能かと思います。それ以外のレイヤーも当然ありますが、漫画というものに何を求めるか、というのが割と如実に感じられるようになる、という試験紙みたいな存在感がある漫画になっておると愚考いたします。

 で、私個人としてはいい悪いはフィフティフィフティ。人がいない! ビバ! ノウレッジ! ビバはイタリア語で、ノウレッジは英語だ! という妄言がすこんと出てくるくらいに、そういう生活はいいなあ、と思う反面、漫画とか先が見れないという事実をぶっこまれると戻りたいと思うだろうなあ、という部分もあり、つまり五分五分なのです。でも、若干行ってみたいという気持ちが強かったりもします。それくらい、ゆるいサバイバル生活というのは人の心をつかむものがある。そう言って差し支えないかと思います。

 それが如実に感じられるのは、乗り物関係。この巻ではモモさんが移動手段を獲得するのですが、それが上でも書いたカブ、乗る! それが大層面白そう。実際、事故を起こす心配が微レ存しかない世界で、しかも免許もなしにカブに乗れる。この誘惑は個人的には大変堪りません。というか、教習所に通わなくていい。乗り物買わなくていい。保険も必要じゃない。交通違反は全く心配いらない。乗り物に付随するあらゆる煩雑な手続きが無くていいというのですから、そりゃあねえ。事故も対人はない。対物はあっても大きな問題がカブが壊れてしまうくらいで、他の乗り物もしっかりあるから買い替えの必要もない。ちょっぱってくればいい。なにそれ、堪らんじゃないか! 乗り物乗り放題! となります。これでは、お父さんが理性で耐えようとするけど揺れ揺れなのも分かろうものです。というか、本当にいいな、乗り放題!

 それ以外でも、バター自作とか、アイスを作るとか、ゆるいサバイバルだからこそ出来るムーブも完備。通常のサバイバルそりゃあ、そっちに心が奪われてしまってもおかしくなかろう。そう思うのでした。次は海に行く模様で、さてどうなるやら。遠い所に行くほど時間が進んでいるっぽいので、遠出すればそれだけだけど、それでその辺りはどうなっているのか。興味は尽きません。と書いてこの項を閉じたいと思います。