吉野貝 『魔王が宿屋をやっていぬ』2巻

魔王が宿屋をやっていぬ。 2 (MFC キューンシリーズ)

魔王が宿屋をやっていぬ。 2 (MFC キューンシリーズ)

 大体の内容。「職業ニートの外堀から攻めらている! 他いくつか」。フェンリルさん(表紙のでかいサモエド)が切り盛りする宿屋の看板娘、リリスさん(表紙の右の子)は基礎職業がニートですが、それでは進級できない! ということでハロワロワイヤルという謎のイベントにぶっこまれる形になった、辺りで今回は紙幅が尽きてしまいました。果たして不穏なアトモスフィアのハロワロワイヤルとは? ああ、ハロワは当然ハローワークです。そんななのが『魔王が宿屋をやっていぬ』2巻の概要なのです。

 ハロワロワイヤルがよく分からないまま発展しそうなので、他いくつかの方の良さが堪らないという話をします。

 まず、1巻からの引き続きで、フェンリルさんがミニマムな子犬になった回。これはフェンリルさんを封じていた神族の輪っかを回収せんが為に仕組まれたことでした。が、奪い返しに来た神族は、「ザ・ワールド!」したのになぜか動けるリリスさんの不穏さと謎のアイテム押しに混乱している内、ついついフェンリルさん復活させてしまいます。あまりのことで逃げ出す神族。しかし謎は残る。何故リリスさんは「スタープラチナ・ザ・ワールド!」の状態で動けたのか? フェンリルさんも元のビック犬になったら動けたので、相当程度魔力が無いと動けない、ということなんでしょうか。謎い謎をぶっこんできますね?

 次に、ギャルファッションしねえか! という回。何故か渋谷というかなんというかな場所やイチマリキューなる場所があるという段階でこの漫画のリアリティラインはどうなっているのか、なのですが、今回作者コメントでそれには意味がある。と吉野貝先生がドマジ顔で説明してくるので、アイエッ!?手王人!? ってなってしまいます。『軍師姫』でも最後ドマジな顔で軍師姫システムについて語ってたので、これは何かあるというのを織り込んだ方が良いと思わされます。吉野貝先生だからな。

 というのはさておき。ギャルファッションしねえか回は、実はギャル賢者ロゼッタさんが友人の引きこもり戦士トリスたんにプレゼントを買う為の行動だった、というのが明らかにされます。尊いかよ。紆余曲折ありつつ、でも最終的にトリスたんが黒ギャル化してしまいます。しかしロゼッタさん的にはおーるおっけー! くり出そうぜ! この田舎じゃあ開いてる店ない時間だけどな! というオチの流れが素早くて笑います。でも、好きな友人の為に服を見繕う。やはり尊いじゃねえか。

 最後にフェンリルさんたちが宿屋を開設した時期のお話。ここのリリスさんと教会の家の娘、二コラさんの初めて出会ってからすぐにユウジョウ! するところが大変よろしい。ほぼ初対面でも、ユウジョウは出来るんだ! そういう感じなのにここでリリニコですかー!? という間違った目も持ってしまいますが、でも最後にはフェンリルさんのモフモフが凍結の危機にあった街を救い、フェンリルさんが受け入れられる、という流れがスムースでありました。こういうとこ本当にさらっとやって、なんかいい話にするのが上手いよなあ。

 ということで、この漫画の振れ幅というのがどこまでか、というのをじりじりとしつつ、偶に尊く、そして基本センスがいいずれを見せてくれます。基本的に何かがおかしいんだけど、特にそれを強調しない仕草が顕著でしょう。この辺りの、ボケているという様を解説しない手管。この辺りが『魔王が宿屋をやっていぬ』の、ひいては吉野貝先生の非凡なところと言えるのです。

 とかなんとか。