ネタバレ感想 高遠るい『はぐれアイドル地獄変』6巻


はぐれアイドル地獄変 6
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「<戦乙女闘宴>、開幕!」。するのはこの巻の中盤以降で、それまでは基本的にエロコメ展開。ある意味では主役はどちらかはっきりしている感じなのが、『はぐれアイドル地獄変』6巻なのです。
まず語るべきエロコメ展開の方は、覗き&下着ドロ少年との邂逅、バラエティ番長の寝取りレズックスからの奪い返しレズックス、なんとかの極み乙女っぺれえのの浮気ネタ、そして死んだはずだよ後輩さん心霊ネタと展開していきます。
この中で特に良かったのはやっぱりというかなんというかですが、下着ドロ少年との邂逅でしょう。ただでさえド助べえ体の海空さんが見られているとも知らずに薄着というかほぼ全裸で、というのから更に派生してパンツを奪うッ! までいく少年の気持ちは痛いほどわかってしまいます。やっぱねえ、あんなにエロい体の人が身近にいたら、暴走しちゃうよね、と。良くないことなんだけど、でも気持ちがとても理解できてしまう。
ですが、その行為も長くは続きません。流石になんどもパンツが消失しているのに勘付いた海空さんによって、少年は捕まってしまいます。あなや! あなおしまいか! と思われたところで、少年が必死にそれだけは、それだけは、と謝り倒すことに仏心が出た海空さんによって、少年の罪は許されます。その上、これ以上しないように、しようと思ったらこれを見て、と脱ぎたてパンツが与えられるのです。ブッダ! なんたる仏心!
で、これで終われば普通にエロいい話だったんですが、この話の展開には先がありまして、55年後に、その少年が司法のトップになってしまうのです。流石にこの時間のジャンプにはビビりましたし、海空さんに許されたことを胸に司法の世界で罪を裁いてきたというのもビックリでしたが、それ以上に判決の時に欠かさず海空さんのパンツを嗅いでいたというあっと驚き過ぎて顎が二段階で外れるようなあんぐり話が持ち込まれるのです。色んな意味で、俺にどうしろというのだ……。という内容で、そこを持ってこの巻のエロコメ展開の一番デカい柱だったなあ、と言えます。正直に言うとむちゃくちゃするなあ! ですね。
さておき。
<戦乙女闘宴>の方は色々な要素がいきなりぶっこまれます。ガチの格闘大会だけど海空さんに戦う動機がない、という話や、海空さんのお父さんが謎の事故死をしたとかが入れられるのです。そんな中で、海空さんは故郷沖縄の空気を吸って戦う理由を感じ、また父の死について思い出させられて襟を正す、という感じに進んで、大会へと向かっていきます。
試合の方は流石に刃牙フォロワーの一人なだけあって、見どころの付け所が大変上手いです。こういう所謂大会もので『グラップラー刃牙』が優れていたのは、誰が勝つか分からないという、ある意味真っ当に考えたらそうなって当たり前なところをきっちりとしたところです。この情報が出てきたからこっちが勝ちだな、という予測が立たないのが、刃牙の優れたところなのです。
つまり、今このキャラに積み上がっている瓦がいきなり割られるかもしれないし、まだ積み上がってもしかしたら主人公を食うかもしれない。というレベルまで、他の対戦相手がクローズアップされ、そしていきなり倒されたりする。暴獣板垣恵介が一代で作り上げたこのシステムの内に、この漫画もあります。それが顕著なのはムエタイVS柔道の回。柔道側が勝つ流れか? と思わせておいて、服無しの組手でムエタイに敵うものはない、という無情の判定で柔道側が敗れる展開でしょう。いい? ここはかなり重要よ?
というのも、単に板垣システムに乗っかっているだけじゃない、というのが分かるからであります。
先に書いたように板垣システムはどっちが試し割りの瓦になるか、というのが基本上手く処理されるのですが、板垣先生は偶に理の外にある理によって勝敗を決する時があるのです。最大トーナメントシーズンの愚地独歩VS天内悠の決着のように、えっ、そういう処理!? ってなることがあるのです。そこら辺は完全に暴獣板垣のさじ加減次第で、我々には理が全く見えなくて、でも押し切られる、という事が往々にしてありました。
その点については、高遠先生はよりクレーバーに理詰めで処理をしているのが、ムエタイVS柔道で理解できます。まず柔道側が組み付けば、というのでじりじりいっていけるか! となったところで服のある柔道の組手と、服のないムエタイの組手とでは、後者の方がルール的には強い、というのがしっかり提示されて、敗北する。理外はなく、理詰めなのです。この流れだけでも、高遠先生が単なるフォロワーで収まらない、あるいは単なるフォロワーでは収められない、部分として立ち上がっているのです。この辺は本当に、流石だなあ、と感じ入りました。
さておき。
こっからしばらくエロコメ路線がない、という可能性がギャン高くなっていますが、<戦乙女闘宴>編も面白いので、このままこの路線で突き進んでいってほしいなあ、と思うのでした。