感想 藤沢カミヤ 『ウサギ目社畜科』


ウサギ目社畜科 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「月おっかねえ!」。ブラック企業でひーこらと仕事をしている真司郎さんの家に、突如として突進してきた謎のうさぎの要素のある生物、うさみ。月からやってきた、リストラされて、という話を聞きながらとりあえず腹が減ったというのでガリを食わせたところ、あまりにちゃんとした食事! と歓喜する始末。そんなこんなで真司郎宅に住み着くことになったふわみの明日はどっちだ! それが『ウサギ目社畜科』なのです。
話の進入路は、ある家に何かよく分からない者が居候する、という王道テンプレートです。ですが、ふわみの社畜精神が何かキメているレベルで意識高いせいでこの生物は大丈夫なのだろうか。と老婆ならずとも心を砕いてしまいたくなるもので、これ一点突破でこの漫画は成立しているとさえ言えます。
その社畜精神具合は真司郎さんが家庭のことを一切をして、1円だ! って言って退けようとしたのに、働いた上にお金がもらえる! とか言い出すので、月の労働形態、どんだ頭おかしいんだよ! どんだけ社畜さが染みついているんだよ! 案件です。この盛大なる社畜精神でふわみが色々するのが、この漫画の面白みであります。
そもそものふわみの月での労働状態が、あまりにスケールの違うのでブラックというよりはダークマターレベル。ご飯が樹液で、それでも駄目なら木の皮とか言い出したり、気が付いたら昨日まで一緒に働いていたウサギがどこにもいなかったりと、その黒さ具合がブラックホールに本当に吸い込まれるレベルになっています。そこからリストラされたのはむしろ助かったのでは? という思いにとらわれてしまいますが、ふわみ本人はもっと働きたい! というやはり社畜メンタル。月の住人は基本働きたいのが多いらしいにしても、この社畜メンタルはどうなっているのか。言葉が変ですが、これ治ったりするのだろうか。あるいは月に戻れることも? その辺の展開が気になるところです。
それで気になる点が一つあるんですよ。1巻の間にもう一体月の住人が現れ、真司郎さんのところに厄介になるのですが、いや、そんな頻度でうさぎを放逐してたら、地球に月の住人があふれているのでは? と。いつの間にかいなくなっていたうさぎとか、放逐されたのだろうとはわかるんですが、じゃあその後は? と思うとこれもまたブラックというか黒い話になってしまいそうな……。人間に飼われているならまだよしとして、飢えて、とか実験体に、とかあったりしそうです。その辺の、地球側の受け入れがどうなっているのか。その辺がとても気になってしまうのですよ。そういう漫画じゃねえからこれ! ふわみの社畜マインドを見て、湿った笑いを誘われるものだから!
とかなんとか。