感想 大柿ロクロウ 『シノビノ』4巻


シノビノ(4) (少年サンデーコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

帯へのツッコミ「そんなターンAターンみたいなこと言われても!」。
ということで、黒船来航編が一段落ついて、新たな駆動系が必要になった『シノビノ』。そのエンジンとなるのが、坂本龍馬! しかし、その坂本龍馬は、アトラス脳で言うとイビルでカオス! そんなそのぶっこみありかよ! なのが『シノビノ』4巻の伏流なのです。
坂本龍馬が主流、ストーリーの棚に乗るのはこの巻中盤からですが、だというのにこの邪悪具合がすっぽりと収まる様は本当に脱帽です。一つの事件が片付いた、となってそこへのワンクッションの回で、その邪悪、もっと強く且つ荒木飛呂彦的に言うなら「吐き気を催す邪悪とはっ!」っぷりを見せつけられます。それがもう、マジで吐き気を催す邪悪です。最小の行動で最大の効果を出す、という策士キャラだったら大体大きな見せ場になる部分で、しかしそこで村を一つ壊滅させる邪悪っぷりを見せつけるのですから。しかも、打った行動は二手のみというので、策士としても優秀なんですよ。でも吐き気を催す邪悪。質が悪いとはまさにこのこと!
古今、色々な坂本龍馬像はありましたが、ここまで短く且つ印象的に且つ邪悪に存在感を見せた例は寡聞にして知りません。確かに、坂本龍馬明治維新の重要なピースであり、時代の変革者として、一般的には思われている存在。しかしそれが、繰り返しになりますが、吐き気を催す邪悪。ということで、ここに龍馬暗殺の経緯が裏返ってくるのが既に分かります。が、裏返るにしてもどう裏返るのか。もうこの、龍馬が邪悪なだけで沸き立ってくる歴史の裏を勝手にねつ造するという意気込みが、堪らないんですよ。この俺はやるぜ俺はやるぜ感! もう、そうか、やるのか。しか返す言葉が見つかりません。それで今連載中の辺りがあの展開なんで、もう惑乱という言葉がしくりとくるくらいに手玉に取られている訳ですが、それはさておき。
坂本龍馬の存在感が余りに強かった4巻。一応、甚三郎さんはあちらこちらで事件の解決したり、その事件の黒幕である坂本龍馬と巡り会ったり(!)、未来の新選組と渡り合ったり(!)、色々としていますが、いかんせん坂本龍馬の印象が強過ぎます。きっちりかっこいいジジイとして活躍しているんですよ? でも坂本龍馬が途方もなく新説な存在感なんです。ある意味では、わりを食った感がある巻だったか、と記しておきたいと思います。これ書いている現在の連載での、今後がどんだけトリッキーになるのか、というのが覆ってくると、また違うので、5巻早く読んで楽しみたいところです。
とかなんとか意味不明の〆!