感想 山口貴由 『衛府の七忍』6巻


衛府の七忍 6 (チャンピオンREDコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「こうなったか、人間城ブロッケン! そしてそうきたか、沖田総司!」。ということで、人間城ブロッケンのひとまずの終幕と、魔剣豪奇譚新章、沖田総司編が始まるのが、『衛府の七忍』6巻なのです。
まず人間城ブロッケン。こちらはどう話が発展するのか、と思ってたらあれよあれよと棄民が皆殺しになっていく流れに。地震の後に、というので下敷きに関東大震災があるのは、あるいはあとがきの参考文献をも含めて、間違いなさそうですが、それをダイレクトではなく、創作のワンクッションを入れて、しかし鮮烈にする辺りがマジで卓抜という言葉でしか対応できないレベルになっているかと、思ったりなどします。
そういう部分を持ちつつも、この漫画は『衛府の七忍』。破天荒です。どうなるかと思われた、人間城ブロッケンとその起動の要が、もうちょっと時間かかるかと思ったらカカッとした素早さで結ばれあい、そして新たな怨身忍者霧鬼の誕生へと向かっていきます。その途上で、山本勘助がテヤンの体を借りて転生するという無茶なぶっこみも交えていたりする辺りもまた心地よく。いい感じに虚実が入り乱れ過ぎて実が虚であるような錯覚すら覚えるレベルです。
で、その虚実が更に入り混じり過ぎてなんだかよく分からないモノとして立ち上がっているのが、魔剣豪奇譚新章、沖田総司編です。お前、幕末の人間じゃねえか! という明確な突っ込み所を初っ端から出しつつ、まずはこれが俺の沖田総司、と言わんばかりの魅せ方で山口先生の俺沖田総司を建立してきます。
ものの9ページで立ち上がったその俺沖田総司が、何の因果か江戸初期、『衛府の七忍』タイムにタイムスリップ! というか本当に何の因果なんですかー!? というのを全く置き去りにして、沖田総司衛府江戸を彷徨う話になっています。ここがまたいいんですよ。江戸初期の、剣豪でも大名になれるような時代に生まれていれば、と先に新選組の仲間に言われていた沖田総司。そもそもそういう時代の空気を求めていた新選組であった訳ですが、それのとうの時代に来たら、こいつら、全然士じゃねえ! というので噴き上がってフルボッコにしたりして、色々と精神的に参ってしまった沖田総司。というかタイムスリップしている段階で参らないはずがないですが、それはさておき。
ふらふらと彷徨い歩くそんな沖田総司が遭遇するのが、剣の腕で大名になった男、そう、柳生宗矩! その柳生宗矩に、幕末から唯一持ってこれた、まさしく相棒である菊一文字を見せろといわれ、拒絶する沖田総司! そして抜刀して、さてどうなる! というところで次の巻へとなります。キニナル!
と書いて、この項を閉じたいと思います。