感想 大石まさる 『タイニードライブ』1巻と2巻


タイニードライブ(1) (ヤングキングコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)


タイニードライブ(2) (ヤングキングコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「急造姉妹の単なる日常」。とある町に住むすわ子さんの前に突如現れた、姉だと名乗るルーミさん。すわ、何事!? というのは単にすわ子父がルーミ母と結婚して、家族になっただけ! 特に謎はありません! ということで、しっかりものすわ子さんとうっかりものルーミさんの只の日常。それが『タイニードライブ』なのです。
大石まさるの名を聞いてどういう気持ちが沸き起こるか、というのは人それぞれでありましょう。そも誰? から最近どうなの? まであるでしょうが、個人的には最近どう? な漫画家さんです。アワーズ誌歴では最古参のレベルの方であり、その割にそれほど長期連載を持ったことがないという、ある意味アワーズが無ければ描いてないタイプの漫画家さんだと思っていますが、その大石まさる先生の作の中でも異端な作品なのも『タイニードライブ』です。というか日常4コマ漫画を描くなんて! という思いの方が強かったりします。なんて、にはまさか! とその手があった! の二種類が含まれていたり。というかむしろその手が! の方が10割近くありますよ。その手で行けばいいんだ! という。
大石まさる漫画というとSF的な部分と日常的な部分が上手く折り重なっている漫画が多い印象ですが、今まではどちらかというとSF的なのが評価されやすかったかと思います。しかし、今回はその辺は強く押し出さず、むしろ日常のエッセンスとしてまぶされるに留められているのが印象的です。無い訳じゃないけど、日常を強く推していこう。という意志力を感じるといいましょうか。
そんな意志力で作り出されるのは謎の風流判定をごり押しする回とか、停電のごたごた回とか、本当に日常ものから一瞬日常を忘れ、しかしやっぱり日常という着地点とする日常ものなのです。偶にちょっと羽目を外してたり、死神回とかダンス回とかはあるんですが、それでも基本は日常回。それもちょっとしたところからくすぐってくるテクニカルな、大石まさるの日常回なのです。結構ギリギリな位置を攻めていく日常回なのです! これはわりと特上の物を見ているという意識でみた方がいいかと。
そういう殺し文句はさておき。
個人的に好きなのは、日常回でありつつ非日常的な雰囲気、でも日常回という床下浸水回でしょうか。ルーミさん、すわ子さんの家に間借りしているんですが、部屋が無いので地下に部屋を作った、んだけど大雨でそれが完全浸水! サルベージの為に釣るぞ! って回です、非日常的な雰囲気でありつつ日常回である、とお分かりいただけるでしょうか。で、更に吊り上げられるのがルーミさんのトラウマスイッチというので、その内容にくすくすと笑いを起こさせられます。そうそう、こういうの、見たかったんだ!
後、すわ子さんとルーミさんの姉妹関係がいい感じにぐだぐだなのもいいです。いきなりの姉妹化でぎくしゃくしそうなところですが、案外どちらも肝はしっかりしているからなのか、なんだかんだでいい姉妹となっています。特に百合ではありませんが、それはそれで! なのです。姉妹って言うより兄妹、姉が妹扱いだけど、な感じ、と言えばより伝わるでしょうか。その関係性、イエスだね!
と、手放しで喜びたいですが、この漫画2巻で終了です。嘘だそんなことー! ってなりますが、事実なのでしょうがない。でも、これはこれで、いいサイズ感だったのかもなあ、とも。色んな手管の大石まさる日常ものが見れたので、それで満足、したぜ……。と鬼柳京介顔です。また違う作品で、日常ものやってくれたらなあ、そんなことを考えながらこの項を閉じたいと思います。