アサギユメ 『サジちゃんの病み日記』1巻

サジちゃんの病み日記 (1) (まんがタイムKRコミックス)

 サジちゃんの病み日記 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「それはあまりに病い愛」。表紙絵の女の子、サジちゃんには将来を誓った仲の女の子がいました。しかし、数年ぶりに遠目で見た彼女には、違う女の子が。そこから繰り出される病みの一言では済まされない恋情。それが『サジちゃんの病み日記』の構成要素なのです。

 先に言えば、この漫画は百合漫画です。サジちゃんには、それが狭い範囲ではあったにしても恋情を抱いた相手、ひかりさんがいました。ここでまず一百合。次にそこに自分とは違う女の子、メロさんがわりとべったりと恋人の如く。二百合。それ故に命さえ狙われるメロさんですが、それでもひかりさんは渡さないと丁々発止でやりあいます。その中で、ひかりさんとサジちゃんをもっと穏便には、と言うのも出てきます。三百合。一百合+二百合+三百合で6じゃねえぞ! 600だ! 十倍だぞ十倍! という感じに細かい装飾をはぎ取ればかなりの百合漫画であります。

 ただ、この細かい装飾が、大変取りにくい、排除しにくい具合に本筋と絡まっています。サジちゃんが好きという気持ちが大きすぎたがゆえに、幼い頃に抱いたそれを風化させず、1巻のカラーでは家庭環境的な意味でもそれを助長されているのが察せますが、高校生になって行動力などを会得してしまってえらいことに、というのがこの漫画の骨子であり、それゆえにひかりさんを希求することが暗転してしまっているのです。

 この辺がよくでているのが、メロさんの命を狙う回。包丁持ってでかいぬいぐるみの中に潜伏。そしてひかりさんが寝静まった所でメロさんを、というわりとどころかサジちゃんとしては絶対殺すウーマンで挑んでいる辺り、マジでサジちゃんヤバいというのがひしひしと漫画から感じられる回でした。しかし、ここでメロさんはサジちゃんがひかりさんに呆れられる、と言われただけでメソメソしだすのに、仏心が出てしまいます。ひたすら不器用なだけなんだ、という理解で、であります。

 これは実際その通りっぽいのが、サジちゃんの回想回で垣間見れます。基本閉ざしていた心に、ふっとひかりさんが入ってきて、というのでかなり王子様ムーブなひかりさんですが、その逢瀬の時間が終わりを迎えた時にした約束に、サジちゃんは縛られ続けていたとのこと。成程、一途じゃねえの。

 ですが、サジちゃんはやはりメロさんに対する嫉妬心と、ひかりさんに対する恋情が止められなくなり、ひかりさんを拉致するという行動に。そこでようやく、サジちゃんと昔に出会っていたことを思い出すひかりさん。でも基本的に王子様ムーブで、サジちゃんのヤバさに気づいていないので、ここはどうなるか、でしたが、それはサジちゃんとしてはある意味最悪の結果に終わる形に。そのまま解き放たれたひかりさんが、しかしサジちゃんが調子よくなさそうで、という風に気遣うのもまた残酷さを感じさせます。

 そして、このことでメロさんはサジちゃんをガチで糾弾します。本気で殴りもします。お前はしてはいけないことをしたんだ、と。その前の己への殺人未遂については不問としている辺り、メロさんもひかりさんのことの方が怒りポイントなんだな、とも思わせて百合いです。が、ここで完全に改心はしないものの、ほんのりの少し前向きになるサジちゃん。これから少しマシになる可能性が? となったところに最後の一本の、謎の女の子がサジちゃんのひかりさんコレクションを片づけている、という色んな意味で意味深なシーンがインサートされ、一気に不穏度が増してこの巻は終了となります。

 そう、次の巻はこの不穏さを出す謎の女の子が収まりかけた事態を深刻にしていくのです……。ヤバいサジちゃんを食う、更にヤバい女の子。この存在がこの漫画をどう回転させていくのか。楽しみですね? 毎月MAXでそのヤバさに触れているので、本当にこの子はヤバい。そう言っておきたいと思います。

 そんなヤバい女の子のヤバいさまを見る漫画。それが『サジちゃんの病み日記』なのです。