迂闊 『日々是平坦』1巻及び2巻

日々是平坦 1

日々是平坦 1 (楽園コミックス)

 大体の内容「前半のドキドキ感と、それを様々意味で破壊する後半」

日々是平坦 2

日々是平坦 2 (楽園コミックス)

 大体の内容「この純粋男女交際の余韻も破壊されてしまった! おのれディケイドおお!」。

 ディケイド関係ないやん! というのはさておき、『のみじょし』ファンのあなたのまだ知らない迂闊先生の側面が見られる前半の『純粋男女交際』と、やっぱりこうなっちまうのかよ! な後半『日々是平坦』の落差に大打撃を受ける漫画。それが『日々是平坦』なのです。

 個人的な所感ですが、迂闊先生はこの単行本前半部にある『純粋男女交際』が特に描きたいのではないか、と睨んでいます。そちら側の、ちょっとしたことでドギマギする男女、というのが大変爽やかに活写されており、そのちょっとが二人の間を加速させる、というので、本当に見ていてニヨニヨと出来るのです。こういうむつみあい、イエスだね! そう思う気持ちが強くなるのです。

 ですが、この漫画は後半であるところの『日々是平坦』を題として掲げています。この点に関しては、ある意味仕方ないという諦念がぶっこまれるのです。

 というのも、『日々是平坦』パートの青春の駄目さ、または高校生のどうしようもなさが、とにかく印象に残り過ぎてしまうのです。特に男子三人組の駄目さ加減は特筆もので、と特を二度使う程なのです。昼飯代を節約する為に色々としこみ過ぎて昼飯代が減額されたり、昼飯をストーブの上に置いていたら熱くなって取り落としたり、バレンタインで貰える貰えないで女性陣の友チョコにすら食いついたり、もう、やっぱりこいつらもう駄目だ! という惨憺たる状態です。これがすこぶるテンポよく進められるので、スコスコ読めてスコスコこいつら駄目だ! ってなる。このアレさ加減によって、『純粋男女交際』の余韻は完全に吹っ飛ばされしまいます。成程、この漫画は『日々是平坦』で題とって正解なんだな。そんな気持ちにすらさせられます。

 さておき。

 話のペースは『純粋男女交際』はカップルがお家で勉強デートという真面目か! なのでペースが遅め。そして純粋な愛し合い方をしており、キスとかも結構経ってから。でも、気をつけないと一気に進んでしまう! 肉体関係になってしまう! として自分で規制かけている部分もあって、それがらしくて余計にニヨニヨできます。

 対して『日々是平坦』は単話オムニバス。なので一話の中でバタバタする場面が多いのが特徴です。個人的には、バレンタインに母からその男子の幼馴染へ友チョコを渡してくれ、という母様一周回って策士なのでは!? という無茶ぶりをされた男子がどうやって渡そうかと四苦八苦する回が、終わり方のですよねー!&じゃあ今までのなんだったんだよ! のダブルパンチで訳が分からない感じで大好きです。終始男子の面子と母の指令の板挟みで懊悩する様を見る漫画、と書いたら本当に何だったんだろう。感が強過ぎます。この話は2巻収録なので、皆さんも見て「なんだったんだろう」って思っていただきたいところです。

 『日々是平坦』パートばかり言ってますが、それはやっぱり特徴的過ぎるからで、実際の所『純粋男女交際』の方も、大変楽しめます。こっちもある意味でこういうカップルがいてもいいよね? という提示として際立っていて、大変よろしい。一々堅物だけど女の子に対してちょっと欲求を出していく男子、というのがなんとも。それを、ちょっとおっかなびっくりだけど受け入れる女子というのもなんとも。初々しいわ!

 その点『日々是平坦』はこんなやつに会わなくて良かった。という謎の安堵をもたらすところがあります。特に作者の歯止めがかからなくなってきた篠田さん(女子)の横暴っぷりが爆発する回は、大概この漫画のマスト回になる、というある意味最高の存在ですが、あまりに横暴なので絶対現世で知り合いたくない人でもあります。その人の幼馴染の男子は大変大変そうで、ある意味こうやって見るからいい相手っているよな。という達観すら味わえます。

 そんな二面性というか、振れ幅があるのが『日々是平坦』単行本なのです。