杜康潤 『孔明のヨメ。』9巻

孔明のヨメ。 (9) (まんがタイムコミックス)

孔明のヨメ。 (9) (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「そして軍師諸葛孔明前前前夜」。お話の方は、三顧の礼が始まる直前となっております。そんな軍師諸葛孔明前前前夜にして、徐兄が曹操の軍門に下る展開へと向かうのが、『孔明のヨメ。』9巻なのです。

 8巻で徐兄の使いっぱのようでいて、かなり色々した孔明さん。戦の方にも貢献して活躍しておられました。その後でも、徐兄に助言を与えたりするものの、士官という方向にはとんと思い至らぬよう。でも、それをしたがゆえに元の荘園経営に戻っても、色々考えてしまってぼんやりすることが。というので、月英さんがもっと世に出ては、と進言していい雰囲気になったり。

 で、すわ接吻! と思った所で徐母登場で事なきを得ますが(?)、その徐母の来園理由は、遠くに旅立つので一度ね、というもの。

 しかし、これは曹操側の仕組んだ罠でありました。死んだ息子の墓を、というのですが、息子さんは病死、となってましたが死没のタイミングが曹操側に良過ぎるので、これは謀殺だろうなあ、と読者側が理解させられつつ、でもそれは止められないこととして読者に突き付けられるという形に。そして、徐母を人質にした曹操側は、徐兄を呼び寄せて……。という流れとして、三国志の史実にすり合わされていきます。

 そして、すり合わせはそれだけではありません。袁家を攻め、そして公孫家にその残党を討ち取らせる策を弄じた、北方の制圧に対する最大の功労者、郭嘉が病気により没します。これはその場面を全く描かない代わりに、曹操がその名を聞いて機嫌を悪くしたり、程昱がその祭壇で事後の報告をしたり、で見せてきます。あまりに劇的な死ではないから派手には出来ない。でもナレ死ではいけない。という杜康先生の誠実さがしっかり出た、見事な死に様描写でありました。こういう形で逝去する人というのが初だったので、ちょっとびっくりしたけど、でも史実的にはここだから当然やらないとなんだよなあ、とも。

 さておき。

 この漫画はどこまで行くのか、というのは懸案です。完全に三国志の話をするという手もある。でも軍師孔明が成立した時点で区切るという形もあるのでは? となって、どうなるのかと悶々としてしまいます。三国志の話をきっちりするのだと、どうしても他の漫画の存在が目に付いてしまうというか、そこに至る前という地点によってこの漫画は特異だったので、そこで三国志物としてずっとやっていく、というのもどうなのかなあ、と。いや、じっくり見たい気持ちはあるんですよ。この漫画のテイストで三国志はちょっと見たい。でも、そうすると長くなりすぎるようにも思う。この辺のバランスが取れる形で、きっちりやれるのか。あるいは一区切りつけるのか。どっちになるのかなあ。

 などと杞憂を垂れ流して、この項を閉じたいと思います。